(ブルームバーグ): 日本銀行が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大幅な悪化を記録したが、市場では日銀による追加の金融緩和に対する期待の高まりはうかがえない。株式や為替市場が安定した動きを続ける中で、日銀は3月以降、相次いで打ち出してきた企業の資金繰り支援策や金融市場の安定化策の効果を見極める段階との見方が多い。

  6月短観では、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)がマイナス34に悪化し、リーマンショック後の2009年6月調査(マイナス48)以来の低水準となった。同非製造業もマイナス17に悪化し、東日本大震災後の11年6月調査(マイナス5)以来9年ぶりのマイナスに転落した。

  新型コロナの世界的な感染拡大に伴う経済活動の停滞が企業心理を直撃した形だが、金融市場では冷静な反応となっている。日経平均株価は前日終値とほぼ同水準の2万2000円台で推移し、ドル・円相場も1ドル=107円台後半で落ち着いた取引となっている。

  最近の金融市場の安定もあり、6月短観の大幅な悪化を受けても、日銀が7月14、15日に開く次回の金融政策決定会合での追加緩和への思惑は市場では高まっていない。

  大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、短観発表後のリポートで、7月会合後に公表される新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、「4月時点に比べて、2020年度のGDP(国内総生産)の数字は下方修正される可能性が高い」としながらも、日銀は「引き続き政府との連携をアピールし、当面は様子見の時間帯」と指摘する。

  BNPパリバ証券の白石洋シニアエコノミストも、短観の内容は「日銀としては悪い数字だが想定内ということではないか」とし、「必要ならさらなる政策も辞さないということであろうが、これまでにコロナ対応の政策は打ち出しており、当面はその効果を見極めていくということだろう」と予想する。

  日銀は3月以降、感染拡大の影響に対応するため、政府とも連携して企業などの資金繰り支援策や金融市場の安定化策を相次いで打ち出したきた。6月15、16日の金融政策決定会合の主な意見では、新型コロナの影響に対応するための日銀の政策措置は「おおむね出そろった」とし、当面は一連の政策効果を「確認・検証することが望ましい」との意見が政策委員から示されている。

  6月短観では、金融機関の貸し出し態度判断DIは全規模・全産業ベースでプラス19と、前回調査からの悪化幅は1ポイントにとどまった。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストはリポートで、「コロナ禍の影響が色濃く出るなか、唯一悪化を免れたのは金融機関の貸し出し態度判断DI」とした上で、「リーマンショック時のような厳格化は観察されなかった」としている。

  もっとも、コロナの影響に伴う世界・日本経済の先行き不確実性は依然として大きく、金融市場も引き続き神経質な状態との見方が、黒田東彦総裁の会見や主な意見でも示されている。6月短観では、大企業こそ先行きは景況感の改善見通しが示されたが、中小企業は悪化を見込む。先進国を中心に経済活動が段階的に再開されているが、市場では経済の持ち直しペースは緩慢なものにとどまるとの見方が多数派だ。

  黒田総裁は、26日のオンラインイベントで「感染症の経済・金融面への影響には大きな不確実性がある」とし、「当面、感染症の影響を注視し、必要があれば、あらゆる手段を、ちゅうちょなく講じていく」と表明した。次回会合では、先行きの経済・物価見通しを入念に点検した上で、さらなる企業支援措置を中心に政策対応の是非が慎重に議論されることになりそうだ。  

(第8段落を追加して更新しました)

©2020 Bloomberg L.P.