(ブルームバーグ): セブン&アイ・ホールディングスは3日、米子会社を通じて米石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「スピードウェイ」を210億ドル(約2兆2000億円)で買収することを決定したと発表した。米国市場の成長拡大を狙い、2021年第1四半期の取得を目指す。

  買収の規模は米国企業を対象にしたものでは年初来で最大、セブン&アイにとっては過去最大となる。セブン&アイは成長戦略の柱に海外コンビニ事業を掲げており、特に成長が期待されている米セブンーイレブン事業の店舗網拡大を進めてきた。18年にはガソリンスタンド併設型のコンビニを手掛ける米スノコから1030店舗を約31億ドルで取得している。

  米国で約3900店を運営するスピードウェイを買収することでグループ全体の成長を加速させることが可能で、4事業年度以内にセブン&アイの1株当たり純利益を約50円押し上げる効果を見込んでいるとしている。米セブンーイレブンは約9800店を運営しており、このうち約8割がガソリンスタンドを併設している。

  同社の井阪隆一社長は同日午前の電話会見で、米国市場は3強による寡占化が進んだ日本市場とは異なり細分化された成長市場だと指摘。買収は「千載一遇の機会」で「大きなグローバルリテーラーになるための一歩を踏み出す歴史的な瞬間になる」と述べた。既存の米事業は、新型コロナウイルスの感染拡大が続く状況下でも右肩上がりの成長を維持するとの見方を示した。

  セブン&アイは2月にスピードウェイの買収で独占交渉に入り、今回を上回る約220億ドルを提示したが、価格面で折り合わず断念していた。その後米国では新型コロナウイルスの拡大や人種差別に対する抗議デモの広がりなど、小売業に影響を与える出来事が相次いだ。

国内は飽和状態

  コンビニ業界に詳しい、やらまいかマーケティング代表取締役で流通アナリストの渡辺広明氏は、国内のコンビニ業界は「人口減少する中で限界まで来ている」と飽和状態にあると指摘。米国での買収について「短期的にはコロナで影響を受けるが、中長期的に米国は移民などでまだ人口が増える」ため、売上高の増加が期待できるとの見方を示した。 

  買収資金については130億ドルのブリッジローンやセブン&アイから米子会社への増資80億ドルで賄い、新株発行を伴う資金調達は予定していないとしている。発表によると取得価格に対するEBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)の倍率は13.7倍。今後有利子負債が膨らむ見通しだが、2 年後にはEBITDA有利子負債倍率を買収直後の5倍から3 倍以内に抑制することを目指している。

  ジェフリーズ証券のアナリストのマイク・アレン氏は、セブン&アイは北米首位のコンビニチェーンとして、2位のカナダのコンビニ運営会社アリマンタシォン・クシュタールに規模で大きな差をつけることができたと評価。13.7倍というEBITDA倍率については、節税効果や今後の資産売却を考慮に入れれば「狂ったようなレベルではない」と述べた。

  セブン&アイ株は3日午前の取引で、一時前週末比8.4%安の2937.5円を付け、3月23日以降で最大の日中下落率となった。会見に同席した丸山好道執行役員は、今後1−2年内は負債の削減を優先する考えで、株主還元については柔軟に行っていくと述べた。

(社長会見の発言や詳細を追加し記事を更新します)

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