(ブルームバーグ): ソフトバンクグループの孫正義社長は、創業来最大の赤字を計上してからわずか3カ月後、一転して明るい決算を発表することになりそうだ。世界的な株式市場の反発を受け、ビジョン・ファンドの運用状況は改善しており、業績の復活宣言に向け準備は整った。

  ブルームバーグが集計したアナリスト予想によると、4−6月期(第1四半期)の営業損益は1000億円を超す黒字になる見通し。ビジョン・ファンドも4四半期ぶりに黒字転換する可能性がある。前期(2020年3月期)の営業損益は1兆3646億円の赤字、ビジョン・ファンドは1兆9313億円の赤字だった。ソフトバンクGは11日午後3時に第1四半期決算を発表する。

  孫社長は5月の決算会見で、新型コロナウイルスの感染拡大が経済に与えたダメージは深刻で、1929年の世界恐慌以来となる「大変な未曾有の危機」と述べた。その後、米ウーバー・テクノロジーズや中国のアリババ・グループ・ホールディングなど出資する上場企業の株価が反発。新規株式公開(IPO)市場の回復で、ビジョン・ファンドが投資する約90社のユニコーン企業の上場期待も再燃している。

  3月以降、最大4兆5000億円の資産売却や総額2兆5000億円の自社株買いなど財務改善、株主還元策を立て続けに打ち出したことも奏功し、ソフトバンクG自身の株価も2000年3月以来、20年ぶりの高値水準に戻した。

  ジェフリーズ証券のアナリスト、アツール・ゴヤール氏は「株式市場全体が最近どれほど上がっているかを考えれば、ビジョン・ファンドの評価が上がるのも当然だ」と指摘し、「今後数年、投資先の企業価値は上昇を続け、孫社長は再び天才投資家と映るだろう」と述べた。

グローバル・テック株が上昇、IPO人気も回復

  投資企業であるソフトバンクGの業績回復期待が高まっている大きな要因は、世界の株式市場が3月を底に反発基調を強めていることだ。経済活動の再開期待や新型コロナ禍で生まれた特需発生を評価する買いなどが入り、テック企業の比率が高い米ナスダック総合指数は4−6月期に30%上昇し、その後も右肩上がりが続く。

  ポートフォリオでも、昨年5月の上場から低迷が続いた配車サービスのウーバーが同四半期に11%上昇。在宅勤務需要の恩恵を受けたビジネスコミュニケーションツールのスラック・テクノロジーズは16%、がん遺伝子検査会社の米ガーダントヘルスは17%上げた。ウーバーの回復は、中国の滴滴出行やシンガポールのグラブ・ホールディングスなど出資する類似未上場企業の評価引き上げにもつながる。

  IPO市場の好調も追い風だ。米オンライン住宅保険レモネードの株価は7月の上場以降、倍増している。ソフトバンクGは昨年、同社に対する3億ドル(約300億円)の出資を主導し、評価を21億ドルとした。出資比率21%の価値は7億5000万ドルとなっている。料理の宅配サービスを手掛ける米ドアダッシュもIPOを検討している。

資産売却と自社株買い

  4兆5000億円の資産売却や総額2兆5000億円の自社株買い計画も、ソフトバンクGの経営に対する投資家の安心感を高めさせる要因となった。自社株買いと負債削減に充てる資産売却はアリババ株、国内通信子会社のソフトバンク株、米スプリントと合併したTモバイルUS株が使われ、第1四半期にTモバイルUS株の売却益約6000億円、スプリントの支配喪失利益約7500億円などが計上される予定だ。

  自社株買いは既に1兆円分の取得が終了し、残りは来年3月末までを取得期間とする5000億円、同7月30日までの1兆円となっている。

  ジェフリーズのゴヤール氏は、「最近は巨額の自社株買いの影に隠れ、ビジョン・ファンドの実際の収益は以前ほど重要ではなくなっている」と話した。

 

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