(ブルームバーグ): ドイツのルフトハンザ航空はフランクフルト空港周辺の倉庫で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の収束を目指して大量のワクチンを運ぶという大仕事を果たすため、航空機を準備している。

  世界最大規模の貨物輸送会社の1つであるルフトハンザは4月に、ファイザーやモデルナ、アストラゼネカが開発を急いでいるワクチンを輸送する計画を開始した。20人から成るタスクフォースが、15機のボーイング777とMD−11フレイター(貨物専用機)にできる限り大量のワクチンを積み込もうと知恵を絞る。現在25%の稼働率にとどまる旅客機のスペースも使う。

  「問題はどうやってスケールアップするかだ」と、ルフトハンザのグローバルな取り組みを率いるトルステン・ブラウン氏は述べている。

  新型コロナによる旅客需要減少に苦しめられた航空会社がウイルス根絶の試みの役割を担い、世界の隅々へと何十億ものバイアルに入れられたワクチンを運ぶことになる。前例のない作業であり、危機を乗り切るために雇用と路線、航空機を削減してきた航空会社にとってはさらに厳しい。

  国際航空運送協会(IATA)のドジュニアック事務局長は「過去最大かつ最も複雑な物流作業だ。世界はわれわれが頼りだ」と話した。

  IATAは、積載量110トンのボーイング747フレイター8000機分の輸送が必要になると考えている。これによって地球上の全人類の2回分ずつに相当する約140億回分のワクチンが輸送できる。航空分析のシリウムのデータによると世界の旅客機の約3分の1が駐機状態にあることを考えると難しい注文だ。

  世界保健機関(WHO)で予防接種の責任者を務めるキャサリン・オブライエン氏は、数カ月にわたる開発後にワクチンを輸送する作業を、エベレストのベースキャンプに到着してから頂上まで走って登るようなものだと例える。「頂上までの道は実際、ワクチンの輸送だ」と同氏は16日に語った。

  大きな課題には以下のような点がある。

貨物積載量

  貨物専用機は世界に約2000機で、これが空輸される荷物のほぼ半分を運んでいる。残りは2万2000機の旅客機の荷物スペースで運ばれる。航空各社は約2500機の旅客機を貨物専用に転用したが、ワクチン輸送は航空機が通常のルートを通常の頻度で飛んでいた方が容易だった。

  少なくとも最初はスペースが限られる。ワクチンの輸送開始はクリスマス向けオンラインショッピングのピーク時と重なる見込みだ。オンラインショッピングの需要は今年、新型コロナ流行の中で増加している。

  ファイザーは来年末までに13億回分のワクチンを出荷する予定。モデルナは約5億回分を生産し、アストラゼネカは20億回分の生産能力を有し半分は低・中所得国向けとなる。

  エミレーツ航空の貨物担当副社長、デニス・リスター氏は「私たちがしなければならないのは、世界がコロナ危機から立ち直るのを迅速に支援することだ。その1つがワクチンを必要とする人々に確実に空輸することだ。そうすれば旅客も戻ってくる」と語った。

  より多くのジェット旅客機を再稼働させるためには各国政府が旅行制限を緩和する必要があると、IATAの貨物担当グローバル責任者グリン・ヒューズ氏は述べた。

超低温管理

  ファイザーとビオンテックのワクチンの輸送には別の困難も伴う。このワクチンは南極の冬よりも低温のセ氏マイナス70度を保つ必要がある。各社はワクチン輸送に位置と温度を追跡するシステムの利用を計画している。

  ワクチンは到着後、超低温冷凍庫に保管するか、セ氏2−8度の病院の冷蔵庫では5日間保存できる。超低温冷凍庫は市販されており、ワクチンの保管期間を最長6カ月まで延ばすことが可能。または輸送時に使われる特別なファイザー製の容器にドライアイスを補充することで最大15日間保管できる。一度解凍すると、バイアルを再び凍結することはできない。

  

  ワクチンの配送には綿密な計画が必要で、工場から病院まで、そしてその途中のすべてのポイントでコントロールが必要になる。航空機内でそれほどの低温を維持することは事実上不可能なため、航空会社はファイザーの容器を利用することになる。

  ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス、デルタ航空、アメリカン航空グループなどが、ファイザーのワクチンを輸送する準備をしている。

  デルタ航空でイノベーションや貨物輸送を担当するディレクター、ビタル・シェティ氏は「輸送ニーズは変化し続けているが、チームアプローチによって需要を処理するのに十分な航空貨物積載量が確保される」と述べている。

  ユナイテッドは27日に、当局からファイザーのワクチンが認可された場合、迅速に輸送する準備としてチャーター便の運航を開始したと、事情に詳しい関係者を引用して米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。

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