(ブルームバーグ): ジョー・バイデン氏は20日正午(日本時間21日午前2時)、米国の第46代大統領に就任する。トランプ大統領支持者による暴動や混乱を受けた厳戒態勢の下、連邦議会議事堂の西側で挙行される就任式で、バイデン氏は国家の結束を訴える。

  トランプ氏支持者による6日の議会議事乱入事件や新型コロナウイルス感染拡大を背景に大規模参集が見送られる中、「米国の結束」をテーマとする就任式は通常の壮麗さをほぼ欠く形となる。

  バイデン氏(78)は議事堂前に広がる首都中心部の国立公園「ナショナルモール」に集まった支持者の大群衆の代わりに、警備のため配置された大勢の州兵や数多くのバリケードを目にすることになりそうだ。それは、同氏が修復を目指す米国の深刻な分断を浮き彫りにする。

  バイデン氏は就任演説で、前例のない危機に見舞われている米国を結束させるよう国民に呼び掛ける。演説前であることを理由に同氏の複数の側近が匿名を条件に明らかにした。それによれば、米国が直面している異例の難局に全国民が立ち向かうよう求めるという。

  事情に詳しい関係者1人の話では、バイデン氏の就任演説は20−30分程度の見通し。

  ヒューストン大学のブランドン・ロッティングハウス政治学教授は「南北戦争後以来、最も緊張し、紛糾した政権移行だ」とし、「政治システムには円滑な政権移行と最小限の摩擦が期待されているが、われわれはそれが打ち砕かれたのをはっきりと目の当たりにした」と話した。

バイデン氏、就任式を前にワシントン入り

  バイデン次期大統領は就任式を翌日に控えた19日午後、ワシントン入りした。通常であれば祝賀ムードや政治的な礼譲に包まれる首都は、2万5000人もの州兵が警備する厳戒態勢が敷かれている。

  ワシントンに向かうのに当たり、バイデン氏はデラウェア州ニューキャッスルで、この瞬間は「私にとって感情的なものだ」と頬の涙をぬぐいながら言葉を詰まらせた。

  46歳で死去した長男ボー・バイデン氏にちなんで名付けられた州兵兵舎でスピーチしたもので、「ワシントンへの私たちの新たな旅がここで始まるのは個人的に極めて感慨深い。今が暗い時期であるのは分かっているが常に光はある」と語った。

  バイデン氏を乗せた飛行機は同日午後4時(日本時間20日午前6時)前にワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地に到着した。

  約40年間にわたる上院議員時代、全米旅客鉄道公社「アムトラック」の列車でデラウェア州の自宅からワシントンに通ったバイデン氏は、今回もアムトラックを使うつもりだったが、警備上の脅威を理由に断念せざるを得なくなった。

  バイデン氏とハリス次期副大統領の両夫妻はその後、新型コロナウイルス感染症(COVID19)で亡くなった米国人の追悼式典に臨んだ。これまでに40万を上回る人命が失われた。バイデン氏は「癒やしのためには記憶しなければならない。思い出すのが難しい場合もときどきあるが、癒やしとはそうするものだ」と話した。

バイデン次期大統領、就任演説で結束呼び掛けへ−乱入事件踏まえ

トランプ氏は後任の就任式を欠席−1869年の第17代ジョンソン氏以来

  第46代大統領となるバイデン氏はホワイトハウスと道を隔てて斜め向かいに位置する迎賓館のブレアハウスで同日夜を過ごす。米国民の大部分がこれまでに経験した中で最も異例な政権移行のプロセスにあっても守られる数少ない伝統の1つだ。

  退任するトランプ大統領は4年前、前任のオバマ前大統領夫妻による慣習的な善意の印として就任式の前にメラニア夫人と共にホワイトハウスに招かれたが、バイデン氏夫妻を招待する計画はない。

  トランプ氏は20日午前に新居のフロリダ州に旅立つ予定で、バイデン氏の就任式を欠席する。平和的な政権移行を象徴するイベントとして、後任の宣誓就任式を見守ることがないのは第17代大統領アンドルー・ジョンソン氏(在任期間1865−69年)以来だ。

  トランプ氏の支持者による連邦議会議事堂乱入で5人が死亡した6日の事件を受けて、ワシントン中に州兵が配備され、就任式が行われる議事堂やホワイトハウスは高いフェンスに囲まれている。

  この事件の前であっても既に、新型コロナ感染の猛威の中でバイデン氏とハリス氏(56)の公的な就任祝賀行事や大規模集会の開催は見送られることとなっていた。だが、20日の政権移行の風景は、バイデン氏が引き継ぐ米国の深刻な政治的分断を克明に記すことになる。

  プリンストン大学のジュリアン・ゼリザー教授(政治史)は「『前例のない』という言葉を用いるのが適切な場合がときどきあり、極度の危機に見舞われている局面にあっては確かにそうだ」と指摘。新型コロナ禍と、2001年9月11日の同時テロ後に匹敵する状況を合わせたような事態が「とても厳しい」ものであるのは当然だとの認識を示した。

  民主党のストラテジスト、アンドルー・フェルドマン氏は、上院でトランプ氏の弾劾裁判が今後スタートするにしても、バイデン氏の就任祝賀行事がないことで、同氏の政策課題が直ちに焦点になるとコメントする。

  次期政権の政策課題と米国民が実現を求めるものに「集中的に」取り組まねばならず、さもなければ米国は引き続き回復に手間取るだけでなく、政治的観点からも民主党が生き残り、22年の中間選挙で議席を伸ばすのは難しくなるだろうとフェルドマン氏は話した。

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