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米テスラの主力電気自動車(EV)「モデル3」の日本での販売が、2月の大幅な値下げ以降、急増している。EV専業のテスラは世界3位の自動車市場である日本で苦戦を強いられていたが、政府がEVを含めた電動化推進にかじを切る中、国内メーカーが価格競争に巻き込まれる懸念も出てきた。

  事情に詳しい関係者によると、値下げを行ったグレードは想定を上回る販売で、納車時期の見通しはこれまでの6−8週間から12−16週間へと変更された。また、以前であれば翌週には試乗が可能だったが、現在は約3週間先まで予約が取れない状態という。

  テスラは先月17日、日本におけるモデル3の価格を最大で約24%(156万円)値下げ。廉価グレードの「スタンダードレンジプラス」は429万円に引き下げた。国や自治体がEV購入に支給する補助金を加えれば300万円台から買える計算になる。

  日本ではモデル3の値下げは2019年の発売以来初めて。テスラは価格改訂に伴いモデル3を日本への出荷元をこれまでのカリフォルニア州フリーモント工場から中国・上海工場へ切り替えた。

  国内では日産や三菱自動車が10年以上前に自社開発の量産EVを市場投入してきたが、エコカーではハイブリッド車(HV)に人気が集中して売れ行きは芳しくなかった。

  年間世界販売が約50万台まで増え、時価総額6590億ドル(約70兆円)と日本の全自動車メーカーの時価総額を大きく上回る規模に成長したテスラも昨年の国内販売台数は2000台に届かない水準だったと推定されている。

  自動車調査会社、カノラマの宮尾健アナリストはモデル3の伸びについてEVが「安くなったら売れるということが証明された」とし、日本の自動車メーカーにとっては「ショッキング」な事態だと指摘する。

  昨年以降に投入されたホンダとマツダのEVの価格はともに451万円からと、航続距離などで大きく下回るにも関わらずモデル3より高い価格設定となっている。日産自動車が今年半ばに日本での投入を予定する新型EV「アリア」は補助金など考慮した実質的な購入費用を約500万円からと想定している。

  宮尾氏は、日本の自動車メーカーのEVがモデル3との価格差に見合うだけの「価値を訴求できるかといえば正直難しい」と、追随値下げを迫られるだろうと述べた。しかし、EVの販売規模が大きい上、電池を中国から調達することなどを背景にコストを下げてきたテスラと違ってそれも簡単ではないとの見方を示した。

  日産広報担当の百瀬梓氏は他社についてはコメントできないとした。

  世界的な脱炭素の流れを背景に、昨年発足した菅義偉政権は30年代半ばまでに新車販売で電動車を100%とする目標を掲げており、日本でもEVを含めた電動車市場が拡大していくと見込まれている。

(自動車メーカーの反応を追加して更新します)

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