(ブルームバーグ): 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は4日、金融当局として長期金利の急上昇を注視していると述べ、債券市場の動向に穏やかな表現ながらも警戒感を示した。ただ、こうした動きを抑え込もうとするには至らなかった。

  パウエル議長はウォールストリート・ジャーナル(WSJ)主催のウェビナーで、最近の債券利回りの急上昇について、「顕著であり、私の注意を引くものだった」と指摘。「われわれの目標達成を脅かすような、市場の無秩序な状況や金融環境の持続的なタイト化が見られれば懸念するだろう」と語った。

  米国債利回りは過去数週間、新型コロナウイルス禍が今後収束した場合の景気回復やインフレ加速の見方が強まって上昇してきた。利回り上昇を受けて、テクノロジー銘柄を中心に株式市場も不安定化している。

  パウエル議長は先行きの経済回復に期待を表明しつつも、金融当局が大規模な景気支援策を縮小するには程遠いとして、神経質な市場に繰り返し安心感を与えるよう努めた。

  議長は「われわれは忍耐強い姿勢を保つつもりだ」とした上で、「当局目標への道のりはまだ長い」と話した。16、17両日の連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、金融当局者は公の発言を控えるブラックアウト期間に間もなく入る。

  パウエル議長の発言が伝わると、米10年債相場は下げ幅を拡大し、インフレ期待の指標は日中の高水準を更新した。一部トレーダーの間では、長期金利の抑制で金融当局が講じるかもしれない措置について具体的な言及がなかったことに失望感が広がった。外国為替市場ではドルが上げ幅を拡大、米株市場では売りが強まった。

  エバコアISIのクリシュナ・グハ副会長は顧客向けリポートで、「パウエル議長はハト派の姿勢を保っているが、利回りのさらなる上昇を防ぐほどハト派的ではない」と指摘した。

広範な金融情勢に重点

  パウエル議長は金融当局として債券利回り自体ではなく、もっと広範な金融情勢に重点を置いていると説明。「金融環境は非常に緩和的であり、経済回復までの道のりを踏まえれば適切だ」と語った上で、「状況の著しい変化があれば、FOMCとして目標達成を促すための手段を活用する用意がある」と明言した。

  しかし、そうした措置が金融当局によるツイストオペの再開など、どのようなものとなりそうかについては言及しなかった。ツイストオペでは金融当局が保有する米財務省短期証券(TB)を売却し、期間が長めの米国債を代わりに購入することで債券利回りの押し下げを図る。

  経済見通しの改善を背景に、投資家は米利上げ開始時期の予想を2023年の早い時期に前倒ししている。こうした動きが金融当局の考えと合致するかどうか問われたのに対し、パウエル議長は今後の経済動向次第だとしながらも、当局が利上げの条件とするのは「経済がほぼ完全に回復した姿だ」とし、「現実的には、それにはしばらく時間がかかるだろう」と答えた。

  インフレ懸念を巡る質問には、今後1年間に物価は上昇するが持続はしない公算が大きいとの見方を示し、「2%を大きく超えるインフレ期待を生むほどの水準にとどまることは確実にない」と語った。

  議長は米国の雇用に楽観的な見方を示す一方、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)から米経済が回復するにはまだ長い時間がかかるとの認識を示した。

  「まだリスクはあるものの、今後数カ月で雇用創出に弾みがつくと見込む十分な理由がある」とパウエル議長は指摘。その上で、21年中に労働市場が最大雇用に戻るとは考えていないと述べた。

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