女性たちの保守運動 右傾化する日本社会のジェンダー [著]鈴木彩加

 特に今世紀に入って、「保守運動」への女性の参入が目立つようになった。そうした女性たちの行動は、フェミニズムなどによって「主婦である普通の私」が脅かされることへの不安から説明されることが多かったが、著者はそこに疑問を投げかける。
 女性を保守運動につなぐ回路をより詳細に把握すること、そして同じ運動内での経験の男女差をも明らかにすることを目指して、本書は雑誌、動画、インタビュー、参与観察など複数のデータを駆使している。
 具体的な研究対象は、男女共同参画への反対運動と、「慰安婦」問題への抗議活動である。
 前者については、「愛情に結ばれ」「支え合い、助け合う」家族内の人間関係をもっとも重視する「主婦」たちと、それに加えて家族を社会・国家の基盤として位置づける「女性知識人」たちという二つの層が見いだされる。「男性知識人」と「主婦」の間には、主婦の地位や性別役割規範の強調の度合いに関して対立が存在するが、その間を媒介する「女性知識人」が、対立を不可視化させているのである。
 後者の「慰安婦」問題抗議活動については、男性参加者が前面に出ると「男女の対立」が先鋭化しかねないことから、女性が女性自身の問題として運動を引き受けるという構図が観察される。「恥」であるはずの「売春」を公言し政府などからの支援を得ていることをもって「慰安婦」を批判する女性活動家らの論理には、日本社会における性規範の内面化が表れている。
 他方で、活動内部で垣間見られた、「慰安婦」を素材とした男性たちの「からかい」に対しては、女性たちは沈黙する。しかし表立って反論することもできないのであり、ここにも複雑な断層が存在する。
 襞(ひだ)を押し分けるような丹念な分析から、私自身にとって「他者」であった彼女たちの実像の一端を知りえたことに感謝したい。
    ◇
すずき・あやか 1985年生まれ。大阪大招へい研究員。論文「国を感じる」(『シリーズ人間科学3 感じる』所収)。