未完の時代 1960年代の記録 [著]平田勝

 本書の読み方は立場により異なる。前衛党に関心を持って読めば、党の支配に忠実であった著者の人生の真摯(しんし)さ、70年代の「新日和見主義事件」(分派活動を疑っての査問)をめぐる党の人権無視への怒りがテーマである。日本社会での東大出身者の左翼体験記(通俗的だが)とも読める。
 私は著者と同世代なので、60年代をどう生きたか、そこで突きつけられた問題といかに向き合ったか、世代論風に読んだ。
 戦後民主主義世代の多くは、党派性の強い生き方と距離を置いた。一方で著者は、人生の節目節目に党への忠誠心を大切にする道を選んだ。東大に8年在籍し、全寮連や全学連の委員長を務めた。折々の政治行動における教授たちとの接点、新左翼との駆け引き、党の学生対策責任者からの強引な命令――と60年代の政治裏面史を正直に書き残すのは、世代の役割との確信がうかがえる。
 文中の呼称と敬称の使い分けに著者の意地がある。