淡々と日々のできごとが刻まれていく。プールで泳ぎ、大好きなサウナで漫画を読む。38歳の初仕事でルンバを踊り、別の日は池袋でモモジタトカゲのサチ子と出会う――。2019年11月21日、不意に現れる節目の日もあっさりしている。「結婚してみることにした。深夜の北区役所に婚姻届を提出してきた」

 一昨年の冬から昨年末までの日記をまとめた一冊。年に1回ほどのペースでこうした日記本を出版しており、これで6冊目となった。

 日記は夜風呂に入るとき、防水のタブレットにしたためる。必ず6行、300字程度に収めることに決めているという。日曜日は一言、二言で終わらせる。「クリスチャン系の学校に通っていたからでしょうか、日曜はお休み」。繰り返されるそのテンポは読む側にも心地いい。

 中学校のころから自主的に日記を書き始め、断続的だがその習慣を続けている。「日記とは、つかず離れずの関係です」。昔は、胸の内を明かす場だった。いまは、ふと思ったこと、その日の記録が多い。

 ところどころ、自虐的な言葉で笑わせてくれる。「噓(うそ)は少しついたが、比較的善人のふりをして生活できた」(18年12月31日)、「脱いでも『衰えたものを見せるな』という地獄」(19年3月19日)。ご本人いわく、「『枯れた』ような、いまっぽくない文章」だそう。

 夫で漫画家の清野とおるさんは「男」「亭主」との呼称でたまに登場する。新婚生活がつぶさに語られる日は少ないが、終盤では2人でコーヒーショップに寄ったり、清野さんの描く原稿の作業を手伝ったり。「肩を組んで歩くような関係でしょうか。この人より先に死なないようにやっていけたらいいな」

 そこを詳しく、と思うと日記は終わる。もどかしさを抱え続きを待ちたい。(文・森本未紀 写真・鈴木七絵)=朝日新聞2020年5月2日掲載