1946年創刊の老舗文芸誌「群像」(講談社)が、今年から「文×論」というテーマを掲げて「論」の取り込みに挑んでいる。これまでの純文学作品とともに、近年、発表の場が減りつつある批評や評論を積極的に掲載している。一見、時代と逆行するような方針にはどんな狙いがあるのか。戸井武史編集長に聞いた。

 現在、店頭に並んでいる7月号は「『論』の遠近法」と題し、批評特集を構える。東浩紀「考えることを守る」を始め、安藤礼二の井筒俊彦論や、江南亜美子による若手作家・崔実についての論考など13本をまとめて掲載している。

 「この批評総特集は勝負だった」と語る戸井さんは昨年6月に編集長に就き、今年1月号からリニューアルを敢行した。SNSに「いいね」や好き嫌いだけの言葉があふれる現代の状況に、「脊髄(せきずい)反射的な言葉が氾濫(はんらん)し、明日になれば忘れる言葉が繰り返される状況で、なにができるか、と考えた」という。

 誰もが発信できるようになったSNS時代のなかで、「古い紙のメディア」である同誌の役割を「逃げ道としてのシェルター」とイメージしている。

 「いったん、ネットの世界から避難したい人たちはたくさんいる。群像には、言葉を立ち止まって考えている、繰り返ししつこくやっている、そういう人たちの言葉があり、それは生き抜くための武器になるかもしれないし、毛布かもしれない」

 ただ、これからの評論を担っていく新しい書き手の発掘は厳しい状況だ。同誌主催の群像新人評論賞は昨年は受賞作なし。集英社が主催する、今年のすばるクリティーク賞も同様だ。「そもそも、紙のメディアを読んで応募してくる人がとても少ない。批評が読まれなくなったのは明らか」と認める。

 ただ、リニューアル後、号を追うごとに売れ行きは伸びており、手応えは感じている。「ネット上で、みんなたこつぼに入っていた。自分が好きなものに囲まれながら嫌いなものを攻撃したり、見ないようにしたり。でもそこで、生きていく上で必要な言葉を求める人たちが回帰している気がしている」と話す。(興野優平)=朝日新聞2020年6月24日掲載