『知的生産の技術』で知られ、多岐にわたる業績を残した民族学者・梅棹忠夫(1920〜2010)の宗教に関する論考をまとめた『梅棹忠夫の「日本人の宗教」』(淡交社)が、生誕100年を記念して5月に出版された。

 独創的な論文が並ぶなかで目を引くのは、初代館長を務めた国立民族学博物館に残されていたメモ類を元に、未完に終わった著作を追跡した章だ。1960年代後半に梅棹は淡交社の依頼で「日本人の宗教」と題した著作を書くべく、一般市民にインタビューを重ねた。「こざね」と自らが呼ぶB8判の紙片約350枚に構想をメモしていたが、同館の創設などで多忙を極め、出版できなかった。

 親交のあった同館の中牧弘允(ひろちか)名誉教授がこれらの資料を元に、5部で構想されていた著作を推理して復元した。「アナロジー(類推)を巧みに用い、60年代のカウンターカルチャーや妖怪ブーム、海外布教まで幅広く宗教現象を分析している」と話す。(池田洋一郎)=朝日新聞2020年6月24日掲載