『さいえんす川柳』

 ライフサイエンスの企業が2013〜19年の毎年、大学や民間から募った「研究者あるある」の川柳6815句から厳選した傑作170句を掲載している。「あぁ、その日? 俺はいいけどハエがダメ」。デートより実験のショウジョウバエの世話を優先する生態に引きつつも苦笑。
★川柳 in the ラボ編 講談社ブルーバックス・990円

『万葉集講義』

 『文選』なくして『万葉集』なし、と著者は説く。『万葉集』とは「東アジア漢字文化圏の同調重圧のなかで、もがき苦しんだ先祖の文学であった」。それは宮廷の文学であり、律令官人の文学であり、京と地方をつなぐ文学でもあった。代表的な歌に独自の訳を付し、わかりやすく解説する。
★上野誠著 中公新書・968円

『ダ・ヴィンチ、501年目の旅』

 美術批評家で解剖学者の著者が、2005〜19年に欧州の美術館でダ・ヴィンチ作品を巡った旅行記。解剖図の他に類を見ない美しさや、「モナリザ」の左腕が連想させる運動など、旅の中での思索が新鮮に伝わってくる。息子との2人旅もあり、親子の会話も興味深い。
★布施英利著 インターナショナル新書・1012円

『地形と日本人』

 川沿いの高層マンション群など、日本各地で「地形条件を無視した開発が進行している」と、歴史地理学者はいう。近年の自然災害は、温暖化や異常気象だけでは説明できない。日本人が暮らしてきた場所の地形を振り返り、それをどう変えてきたかにも注目すべきだと述べる。
★金田(きんだ)章裕著 日経プレミアシリーズ・990円

『渋沢栄一』

 500近くの企業の設立や経営に関わった「近代日本資本主義の父」。91年の生涯で、経済だけでなく外交や教育など様々な領域にまたがる業績を編年体でまとめて全体像を見せる。よく知られた論語と算盤(そろばん)に加え、「民主化」というキーワードで読み解く。
★木村昌人著 ちくま新書・1210円=朝日新聞2020年10月17日掲載