「森君の好きにすればいい」 金融庁・森長官が官邸の信頼を失ったきっかけ


コロンビア大教授に就任か ©文藝春秋

 金融界が、一挙手一投足を固唾を呑んで見守ってきた森信親金融庁長官(61)の退任が決まった。

「森君の好きにすればいい」

 最大の理解者とされた菅義偉官房長官が、去就について、オフレコ懇談でこう語ったとの情報が流れたのは、今年の初め。

「前代未聞の『4年長官』もありえるとの情報が駆け巡りました」(金融関係者)

 一年前も森長官は周囲に退任をほのめかしたが、結局、菅官房長官と麻生太郎財務相の慰留を受けて続投しただけに、今回もその流れかと金融界は身構えたのだ。だが、実は森氏はすっかり官邸の信頼を失っていたという。

 きっかけは、仮想通貨交換業者・コインチェックの不正流出事件。金融庁に登録審査中のコインチェックから580億円もの仮想通貨が流出し、世間を騒がせた。

「世界で一番早く登録制を導入し、仮想通貨取引の育成を打ち出していた森長官は、官邸から大目玉をくらった」(同前)

 さらに追い打ちをかけたのが「かぼちゃの馬車」向けのスルガ銀行の不適切融資だ。地域銀行に持続性のある独自のビジネスモデルを求める森長官は、高収益のスルガ銀行を「優等生」と高く評価していた。だが、蓋を開けてみれば、ノルマ主義の末、融資審査の書類を改ざんするなど、詐欺に近いスキームだったことが発覚したのだ。

 それでも麻生氏は森氏の続投を求めていたとされるが、

「ゆうちょ銀行の預入限度額撤廃問題で、撤廃に反対する森氏が郵政民営化委員会の岩田一政委員長に『俺の顔を潰すのか』と怒鳴ったとの情報が官邸に伝わり呆れられた」(同前)

 驕る森氏に、菅官房長官も、「もう俺のいうことも聞かない」と嘆いていたという。

 後任人事について森氏は、「かわいがっていた氷見野良三金融国際審議官を後任に充てる人事案を官邸に上げた」(前出・金融関係者)が、受け入れられなかった。そのため後任は、森氏と距離のあった遠藤俊英監督局長が有力と報じられているが、「まだ五分五分、書かないほうがいい」と親しい記者を牽制していたという森氏。3年の治世は本人にとっても金融界にとっても長過ぎたのかもしれない。

(森岡 英樹)


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