傑作ホラーをリメイク。「これは魔女についての映画だ」


ルカ・グァダニーノ監督

 2018年、アカデミー賞に多数ノミネートされ、世界各国で話題をさらった映画『君の名前で僕を呼んで』で、大勢の映画ファンを魅了したルカ・グァダニーノ監督。この大ヒット作の次作として、彼がダリオ・アルジェント監督の傑作ホラー『サスペリア』(77年)のリメイクを選んだことに、驚いた人は多いはず。だがこの映画のリメイクは、監督の長年の夢。10歳の時、オリジナル版『サスペリア』のポスタービジュアルに一目惚れし、13歳で本編を見たルカ少年は、その強烈さに、すぐさま心を奪われる。

「非常にユニークで大胆な映画。10代の私に、もっと大胆になっていいと教えてくれたのがこの映画でした。10年程前にリメイク権を獲得し、ずっと準備を進めてきました」

 1977年、ダンスを学びにベルリンへやってきたアメリカ人のスージーが、舞踏団で不可解な出来事に遭遇する。オリジナルの物語をもとに、リメイク版では、多くの要素が加えられた。一方で、女性たちの存在感はより強まった。現在の社会状況やフェミニズム的視点も影響しているのか。

「今の社会的状況を映画にしようとは思っていません。私は自分の欲望に即した映画をつくっていて、常に惹かれるテーマのひとつが女性なのです。これはいわば魔女たちについての映画。魔女は、男たちが女性を『あいつは魔女だ』と決めつけることで生まれてきた存在です。その覆いを外すには、男性を意味のない存在にすることが必要でした」

 監督にとって重要な女性の一人は、これまでに何度もタッグを組んできた女優ティルダ・スウィントン。彼女は本作でなんと一人三役を演じている。その見事な変化ぶりは、一度見ただけでは気づけないほど。「ティルダと遊んでみたかったんですよ」と笑いながらも、監督は一人三役のアイディアについてこう語る。

「人間の心理の3つの側面を、一人の人間が演じたらおもしろいと思ったし、彼女が女性と男性の両方を演じることで、男はみな女によってつくられていることも表現したかった」

 本作では、ドイツ赤軍の存在も物語に更なる影をもたらす。ファスビンダーらによるオムニバス映画『秋のドイツ』(78年)からの影響も大きい。

「テロリストとは、ある意味で、何かに挑戦しては負けることを必要とする人たち。彼らもまた、目に見えない力によって操られているのでは」

 監督の過去作『ミラノ、愛に生きる』『胸騒ぎのシチリア』『君の名前で僕を呼んで』は「欲望の3部作」と呼ばれている。本作の続編の製作については否定しつつも、最後に興味深い言葉を残してくれた。

「もしかしたら、これがテロリズムをめぐる3部作の始まりとなるかもしれませんね」

Luca Guadagnino/1971年、イタリア、シチリア州生まれ。ティルダ・スウィントンを起用した『ミラノ、愛に生きる』、『胸騒ぎのシチリア』で高い評価を受ける。『君の名前で僕を呼んで』が大ヒット。アカデミー賞の作品賞など4部門にノミネートされ、J・アイヴォリーが脚色賞を受賞。

INFORMATION

『サスペリア』
1月25日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
https://gaga.ne.jp/suspiria/

(月永 理絵/週刊文春 2019年1月24日号)


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