背景や人物が、実際に存在しているかのような映像表現を目指してきた京都アニメーション。このような緻密で劇的な作品を世に送り続けることがなぜ可能だったのか。アニメ評論の第一人者、藤津亮太氏がその秘密に迫る。

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 日本を代表するアニメーション制作スタジオのひとつ、京都アニメーション。同社の作品は、美しく緻密な映像と劇的な物語で知られ、国内だけでなく国外にも多数のファンがいる。ここでは京都アニメーションの歩みをたどりながら、その作品の魅力の秘密を探っていこう。

 同社は1981年に創業し、1985年に法人化を果たした。もともとは仕上(セル画に色を塗る工程)を専門とする会社だったが、やがて作画部門を設け、1990年代半ばから「グロス請け」を手掛けるようになる。「グロス請け」とは、TVアニメの1話分の制作をまるごと引き受けるというアニメ業界の下請けの形態のひとつだ。90年代の京都アニメーションは、丁寧な仕事をする「グロス請け」の会社として業界内での評判を高めていった。

「グロス請け」に対し、出資者から直接発注を受ける制作会社は「元請け」と呼ばれる。2000年代に入って京都アニメーションは元請けに進出し、様々なヒット作を送り出すことで“京アニ”の名前も多くのファンに知られていくようになった。


『AIR』販売元:ポニーキャニオン

 2005年、『タッチ』『銀河鉄道の夜』で知られる杉井ギサブロー監督が、アニメ雑誌「アニメージュ」掲載のコラムで京都アニメーションを取り上げて、その実力を高く評価している。

 杉井は当時放送中の、美少女ゲームをアニメ化した『AIR』(石原立也監督)を見て、女の子たちの性格の違いがちゃんと動きで表現されているところに注目。普通であれば、どのキャラクターも決まりきった動きのパターンで処理してしまうところを、ちゃんと演技を意識して、キャラクターごとに動きを変えるのはなかなかできることではない、と語っている。

「この作品の制作が京都アニメーションだと聞いて、とても納得しました。ここは、以前からアニメ関係者の間では非常に有名なプロダクションです。大きな制作会社の下請け受注をしているのですが、大変しっかりとした仕事をしてくれると定評があり、どこの現場も発注したがるんです。(略)アニメが量産・大量消費の方向に進んでいるなか、業界に打ち込まれた“楔”のようなプロダクションといえるんじゃないかな」(アニメージュ2005年2月号「ギサブローのアニメでお茶を」)

 そして翌2006年に放送された『涼宮ハルヒの憂鬱』(石原立也監督)の大ヒットで、京都アニメーションの評価は一気に確定する。同作は谷川流の同名小説が原作。物語は、高校入学そうそう突飛な自己紹介で周囲を驚かせた少女・涼宮ハルヒが、「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶこと」を目的とした新クラブ「SOS団」を設立するところから始まる。ところがSOS団に参加したメンバーは、皆、正体を隠した宇宙人や未来人や超能力者だったのだ。かくして、本作の語り手・キョンは否応なしに奇妙な事件に次から次へと巻き込まれていくことになる。