シャーリーズ・セロンが、日本出身の特殊メイクアップアーティスト、カズ・ヒロと初コンビを組んだ。2年前、辻一弘の名前でオスカーを受賞し、日本でも話題になった彼は、ファインアートに専念すべく、だいぶ前に映画の仕事から引退を表明している。初のオスカー受賞につながった『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』も、主演のゲイリー・オールドマンから直々にお願いされたからこそ受けたものだが、セロンの説得方法も、「ひたすら懇願」だった。


シャーリーズ・セロン

「彼を引っ張り出した人は、みんなその手だったみたい。でも、私にはもうひとつ有利な点があったの。私が製作するNetflixの『マインドハンター』でも、彼は仕事をしてくれているのよ。あのドラマでやってくれたこともすばらしくて、絶対に彼じゃなきゃダメだと確信したのよね」

 その甲斐はあり、この映画『スキャンダル』で、セロンも、カズ・ヒロも、またもやオスカーにノミネートされている。今回の彼の仕事は、セロンを実在のキャスター、メーガン・ケリーに変身させること。その変貌ぶりは見事で、しばらくはケリーを演じているのがセロンと気づかないほどだ。

「でも、毎日の特殊メイクには2時間半程度しかかかっていないのよ。今作では(予算の関係で)たっぷり時間を使う贅沢が許されなかったの。彼はそれを理解してくれて、本当に必要なところに絞ってデザインしてくれたわ」

 このケリーという女性、実は、人種差別発言で過去に問題を起こしてきている。黒人の養子ふたりを育てるセロンとしては、大いに抵抗があったのだが、反セクハラのメッセージを伝えるため、個人的な思いは押し殺そうと決めた。今作は、ハーベイ・ワインスタイン騒動の1年前、FOXニュースチャンネルのトップがセクハラで追放された出来事を描くもの。ケリーは、その時に立ち上がった女性のひとりである。

「ジェイ・ローチ監督は、これは彼女についての映画ではないし、彼女の人生の特定の時期にしか触れないものだと私を説得した。それで私は、問題点も含めて彼女という人を理解し、表現していこうと決めたのよ。だけど、そう覚悟ができた時に、彼女はまた新たな問題発言をしたのよね。あれにはまいったわ」

 そうやって、外見も、ふるまいも、好きではない人になってみせたものの、アメリカ以外の観客に、そっくりさんぶりはわからない。それは、やはり同局に勤めたグレッチェン・カールソンを名演するニコール・キッドマンについても同様。だが、そこは重要でないと、セロンはいう。

「この問題は、どんな国の、どんな職場でも起こっている。この人たちを知らなくても、この状況には共感できるはず。女性が安全な環境で平等に働けるようにするためには、みんながそうなるよう、協力しあっていかないと。そこには好きじゃない人も含まれたりするのよ」

「#metoo」は女の争いより強いのだ。

Charlize Theron/1975年南アフリカ生まれ。バレリーナ志望から女優に転向。「モンスター」でアカデミー主演女優賞を受賞。プロデューサーとしても活躍、今作でも両方を兼任。

INFORMATION

映画『スキャンダル』
https://gaga.ne.jp/scandal/

(猿渡 由紀/週刊文春 2020年2月20日号)