直木賞作家・島本理生がセンセーショナルな性愛描写で新境地を拓いた問題作『Red』(中公文庫)。発表と同時にその倫理を超えた描写、衝撃的な内容で賛否両論を呼び、累計20万部を売り上げた。そのベストセラー小説を映画化した『Red』が公開中だ。関連ツイートには、女性客の興奮冷めやらぬ感想が並ぶ。

「容赦のない映画」
「ベッドシーンを見て号泣したのは初めて」
「全編が静寂に包まれているけれど、情熱と衝動に息を呑む」
「この映画は物事の善し悪しを問う作品ではなく、人の心が燃える時の輝きや美しさを感じる作品なのかもしれない」
「男性はおそらくたじろぐ。その強さと正面から向き合える男性はどれだけいるだろうか?」


2月21日(金)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー  ©2020『Red』製作委員会

徹底した女性視線で描かれた“異色のベッドシーン”

 だが一方で、男性客の感想には「怖かった」「何を見せられたのかわからない」と戸惑うものもあれば、「あれだけの役者を揃えてまったくの期待外れ」「原作とは違うエンディングに違和感」など、ネガティブなコメントがずらり。「“禁断の映画化”と謳うほどか?」「自己陶酔的で冗長」と辛辣な意見を見聞きすることも、決して稀ではない。

 これほど極端に男女で温度差のある映画も珍しい。その大幅な乖離の理由は、男たちがドン引きし、女たちが泣き濡れるベッドシーンに凝縮されているだろう。妻であり母である主人公がかつて愛した男と再会し、家庭を置いてのめり込んでいくなどという我々が見聞きし慣れたはずの不倫愛が、原作者(島本理生)、プロデューサー(日活・荒川優美)、監督(三島有紀子)全て女性という徹底した女性視線で描かれ、「性行為の一部始終を観客に直視させる」との強い意志すら感じられる、異色のベッドシーンに仕上がっているのだ。

「超男性社会」の映画界で本作が生まれた意味

 関係者はこう証言する。「日本の映画界は超男性社会。中でも老舗の日活で、女性だけでこういう映画を撮れたのは画期的なんです」

 2017年『幼な子われらに生まれ』で家族の心の機微と真理を鋭く描き出し、第41回モントリオール世界映画祭コンペティション部門審査員特別大賞など、数々の賞を受賞した三島有紀子監督。

 映画『Red』は、監督自らが「イプセン『人形の家』の現代版」と語るとおり、世間一般の基準ではおそらく羨まれるほどに恵まれた結婚をしていながら、さまざまな感情を抑え込む専業主婦の塔子(演:夏帆)が、かつての恋人である鞍田(演:妻夫木聡)と再会し、大病を患い死に直面する鞍田の愛の道連れとなり、心と身体の繋がりを経て壊され、解放され、覚醒してゆく物語だ。