A〜C級2組の5クラスに分かれ年間を通して戦う順位戦。その頂点のA級には10人が在籍し、リーグ戦でトップの成績を収めた棋士は名人への挑戦権を獲得する。どのクラスにいるかは棋士の格を示す目安にもなる。その昇級枠は小さく、連続で昇級するのは至難の業だ。

 この順位戦を参加4期で3回とスピート昇級したのが、今期上から2番目のB級1組に上がった近藤誠也七段。まだ23歳の期待の若手棋士だ。近藤七段に、劇的な逆転昇級が決まった夜のこと、天才少年と言われた子ども時代、奨励会時代、そして棋士に求められる「努力と才能」について聞いてみた。


千葉県出身の近藤誠也七段

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優勢で時間もあったときにパパッと指してしまった

――昇級と七段昇段おめでとうございます。B級1組への連続昇級は話題になりました。他棋戦に比べて勝率が良いですし、順位戦が得意なのに理由はありますか?

近藤 4期でここまで来られたのは完璧に近いと思っています。一手一手時間を使って考えられるので、持ち時間が長いほうが得意。終盤に時間を残そうと意識して指しています。順位戦は内容の良い将棋が多く、勝った将棋は時間に余裕を持って指せたと思います。

――9回戦で競争相手の横山泰明七段との直接対決に負けて2敗目。「将棋世界」5月号に掲載された「昇級者喜びの声」では、「この敗戦で昇級を諦めていた」と書いていますね。そのあと2連勝して昇級したわけですが、どう気持ちを立て直したのでしょう?

近藤 横山七段戦は時間の使い方がちぐはぐで、優勢で時間もあったときにパパッと指してしまった。その読みに誤算があって時間を使わざるを得なくなり、先に自分が1分将棋になって崩れて逆転負け。前期(C級1組の2期目)で1敗した西尾(明)七段戦のときも同じような負け方で、順位戦のまずいパターンでした。順位も上の競争相手に1勝分の差をつけられ、他力(自分が勝っても、相手が負けない限り昇級できない状況。このときは、近藤七段が残り2戦を連勝した上に、横山七段が連敗しない限り昇級はできなかった)になってしまいました。

 負けてから中継担当記者の方と駅まで一緒に帰ったときに「順位戦は厳しいので、来週の竜王戦を頑張りますよ」なんて話しました。他にも対局があったので、順位戦よりそっちに切り替えた感じです。10回戦で自分は勝ち、横山七段は負けでしたが、依然として不利な状況なのは変わらない(最終11回戦で近藤七段勝ち、横山七段負けの場合のみ昇級)。周囲からも自分の昇級については何も言われませんでしたし、そんなに気にしていませんでした。