「文藝春秋」7月号の特選記事を公開します。(初公開:2020年6月20日)

 40年前に開発された抗寄生虫薬「イベルメクチン」が、新型コロナウイルスにも効果を発揮するかもしれない――。今年4月、ちょっと驚くようなニュースが世界を駆け巡った。

 イベルメクチンは、北里大学特別栄誉教授・大村智氏が開発に貢献。2015年に大村氏は、「線虫によって引き起こされる感染症の新しい治療法の発見」を理由としてノーベル生理学医学賞を受賞しているが、それは、熱帯地方のさまざまな風土病を撲滅した、特効薬イベルメクチンの開発を評価されてのものだった。


大村智氏 ©文藝春秋

 その大村氏が「文藝春秋」7月号でインタビューに応じ、第一報に触れた際の感想を語った。

「レムデシビル」「アビガン」も注目されているが……

「本音を言うと、このニュースにはあまり驚きませんでした。イベルメクチンは寄生虫駆除の薬ですが、2012年以降は、HIVやデング熱など、一般にフラビウイルスと呼ばれている一群のウイルスに対してもインビトロ(試験管内試験)で効果があることがわかってきていたからです。新型コロナウイルスも、フラビウイルスの一種です」

 新型コロナウイルスの治療薬としては、他にも「レムデシビル」「アビガン」などの名前があがっているが、大村氏は状況を冷静に見守ることが大事だという。

「治療薬のゴールは、副作用の心配がない、効果が科学的に証明されている薬を作ることです。新型コロナウイルスに関しては、それこそ何百万人の人が使うかもしれません。エビデンスやデータがちゃんと揃わないまま『薬がある』と言われても怖くて使えない。ですから皆、あまり安易に『薬が出来た』なんて言わないほうがいいと思っています」

 さらに大村氏は、コロナ後のより遠い未来も見据える。