11月27日、兵庫県加古川市の葬場で、幼い兄弟の通夜が開かれた。遺影と並んで、祭壇に置かれたのは2人が大好きだった阪神タイガースのユニフォームとバット。参列した小学校の同級生たちの嗚咽が響き、兄弟の母親が涙に暮れる姿があった。

 この日見送られたのは、松尾侑城君(12)と眞輝君(7)。小学6年生と1年生の仲の良い兄弟は11月19日夜、自宅で寝ていたところに火を付けられ、その短い生命を突然絶たれた。地元社会部記者が言う。

「放火殺人事件は隣接する稲美町でありました。同居していたのに出火直後に現場から立ち去っていた伯父が逮捕されましたが、亡くなった子どもたちが恨まれる理由はありません。兄弟は明るい性格で可愛がられていて、人間関係が濃密な田舎で多くの人が涙しています」

 事件では、兄弟の伯父にあたる松尾留与(とめよ)容疑者(51)が殺人と現住建造物等放火容疑で逮捕され、火を放ったことを認めている。事件に至った背景には複雑な家庭事情があったようだが、まず経緯を振り返る。


ほぼ全焼した焼け跡から2人の子どもの遺体が見つかった ©文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

2人の子ども、両親、松尾容疑者の5人暮らし

 119番通報があったのは19日午後11時50分ごろ。事件があった稲美町の住宅は、ため池と刈り入れが終わった田んぼが広がる中に昔からの民家が点在するのどかな田園地帯にある。

「気付いたら既に屋根から炎が上がっていて、火の粉も舞っていた。松尾さんのとこやと思って、小さいお子さんたちもおるのに無事やろかと思ったけどあかんかった。恐ろしい光景やったけど、とにかくあの子らが気の毒や」(目撃した近隣女性)

 乾いた季節の炎はあっという間に木造住宅を取り巻いた。20日には、ほぼ全焼した焼け跡から2人の遺体が見つかった。死因は、一酸化炭素中毒だった。

「この家は侑城君、眞輝君とその両親、母親の兄である松尾容疑者の5人暮らしでした。松尾家は元々農家でしたが、15年くらい前に先代のおじいちゃんが亡くなり、今年に入っておばあちゃんも施設に入って今の家族構成になりました」(前出の記者)