なぜ乳がん治療の現場では“日本人特殊論”が信じられているのか

 女性の部位別がん罹患割合で首位に立つのが「乳がん」。さくらももこさんや小林麻央さんなど、多くの著名人を鬼籍に送った重大疾患だ。

 日本だけで年間約7万6000人が罹患し、約1万4000人が死亡しているこの病気には、医療界でも多くの誤った認識を持つ医師がいるという。

 そこで、長年にわたって乳がんを中心とするがんの内科的治療に取り組んできた浜松オンコロジーセンター院長で腫瘍内科医の渡辺亨医師に、乳がん治療で見られる医師の誤解について解説してもらった。


©iStock.com

ガラパゴス化してしまった日本の乳がん治療

「1990年代の終わりあたりから、アメリカのNSABP(National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project)という臨床試験研究グループを中心にした研究により、乳がんに対する高度な治療技術の開発が急速に進みました。

 ところが、その間の日本の医療界は、古色蒼然たる知識にしがみつくあまりガラパゴス化してしまい、欧米に大きく遅れをとってしまったのです。それでも乳がん治療に特化して臨床に当たっている一部の医師は独自に勉強をして最新の知見を身に付けているものの、それはあくまで一部に過ぎない。昔ながらの古い知識で治療に当たっている医師が少なくないのが実情です」

 日本の医療界に根付いてしまった乳がん治療の誤解には、どのようなものがあるのだろう。

誤解その1「日本人には海外のデータは当てはまらない」

 これは渡辺医師がレジデントだった1980年代から言われていたことだという。


渡辺亨医師

「当時は日本人に乳がんが少なかったので、そう言われていたのですが、今は違います。乳がんは日本の女性のがんの中で最も多いがんです。そもそも“数が少ないから欧米のデータが当てはまらない”という考え方そのものが意味不明。この意見には根拠などないのです。すでに患者数も増えたいまもなお、欧米のデータを参考にしようとしないことの理由が見つかりません」

 1990年代後半に調査した年齢階層別の乳がん罹患率の変化を見たグラフがある。白人、黒人、アメリカ在住のアジア人、日本人の4つのグループで比較しているのだが、30代後半から罹患率が上昇し始めるのはどのグループも共通だ。しかし、他のグループでは年齢が高くなるにつれて罹患率も上昇を続けるのに対して、日本人は閉経前あたりをピークに水平線を辿るようになる。渡辺医師は、こうしたデータを元に「日本人には乳がんは少ないという考え方を一般化させていったのだろう」と推測する。


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