後輩・大瀬良大地が生きる希望だった……余命宣告を受けたあるカープファンの物語

 ここに一通の手紙がある。私が交流させて頂いている広島のご夫婦からの文。そこには、大瀬良大地とカープ25年ぶりの優勝を見ることなく亡くなった息子さんの写真が貼ってある。

大瀬良大地と野球を愛して亡くなった先輩の物語

 中林士(アキラ)さん。享年27才。多くの広島人がそうであるように、士さんは物心ついた時から大のカープファン。憧れの鯉たちを見つめていたその熱い眼差しは、やがて彼を野球の道へと誘った。


大瀬良大地と中林士さん

 広島府中高校野球部では主将を務め、その後、九州共立大学へ進学。ともに白球を追う仲間、それを支える続ける恩師に出逢うたびに、彼の胸の中で「いつか指導者になりたい」という夢が膨らんでいった。

 2012年、士さんは北九州市で中学校の教員となり、野球部の監督になるという夢を叶えた。自分の人生に野球というスポーツを与えてくれた恩師の言葉と姿を重ねながら、士さんは球児らに寄り添い、野球の面白さ、仲間の尊さ、家族への感謝を説き、御両親はそんな息子の充実した日々に目を細めていた。

 しかし、それは教師になってわずか1年後のことだった。士さんの右脚に悪性腫瘍が見つかったのである。夢の場所であった学校は休職を余儀なくされ、広島の実家に戻り、過酷な闘病生活を送ることとなった。

 病魔は、日に日に士さんの体を蝕み、やがて肺にも転移……。それでも彼は「ある希望」を胸に大好きな野球を病床から観戦していた。士さんの「希望」。それは、2014年にカープに入団した、大学の3つ後輩にあたる大瀬良大地の存在だった。

「フォームに変な癖がない」
「ストレートの伸びがいい」

 御両親は、うれしそうにテレビ中継を見つめ、新人王に輝いた後輩の姿を自分のことのように喜んでいた背中、日に日に衰えていく身体を起こし、「マツダスタジアムに行きたい」と言い出した息子の手をひき、幼い日と同じように球場に出かけた肌の温もりを今でも思い出す。


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