「おやつはビスコ」10年前、猟師に拾われた子グマが巨体に育つまで

「カーテンを開けたらクマと目が合った」 なぜ今年の秋は“4年に1度”のクマ大量出没シーズンなのか? から続く

 熊猟には語り尽くせないほどの深みがあり、野生の熊を相手にすることに正解はない。さらに、猟師と熊との関係は狩猟にとどまらない。人類学を専門とする私の調査地に「熊を飼っている人がいる」という話を聞いて、檻で飼われている熊に会いに行ってきた。

温和で太っていて、ディズニー映画に出てくるモンスターのよう

 飼い主となった猟師は、10年前に知人の猟師から親を亡くした熊の赤ん坊を譲り受けた。生後間もない子熊は冬眠を経験せずに親とはぐれてしまった場合、冬を乗り切ることができずに山で息絶えてしまうため、命を繋ぐためにどうしようもなく連れ帰ったのだという。

 ぬいぐるみのようであることを予想して行ったが、人間とともに育った熊も野生の熊と同じ目をしている。だが、温和で太っていて、まるでディズニー映画に出てくるモンスターのようだった。通常、冬には100キロを超える熊でも、山の食べ物が少なくなる夏には脂がなくなり骨と皮だけのように痩せる。訪ねていった日は猛暑でかんかん照りだったが、飼われている熊は恒常的に餌を食べているため、脂肪を蓄える秋の熊以上にずん、と太っていた。「くう」と呼ばれたこの熊には、朝と夕の2回、サツマイモや野菜などの餌をやっていた。この日はおやつとしてビスコのブルーベリー味を、飼い主の手から舌を使って器用に口元に運んでいた(「くう」の姿は、一般には公開されていない)。


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