「出身地は福岡市近郊の、飯塚市です。大学と就職で東京にも十数年住んでいましたが、やはり福岡は暮らしやすいです。家から職場も繁華街も近いですしね。都心部の天神から福岡空港まで地下鉄で10分。郊外に少し行けば自然も豊かです」

 と石丸修平さんは語る。現在は福岡市を中心とする地域経済の活性を図る、産官学が提携して設立した福岡地域戦略推進協議会(FDC)の事務局長を務める。いま福岡市は日本でもっとも勢いのある街として知られている。人口、税収は増加の一途、シンクタンクの成長可能性ランキング調査でもポテンシャルランキングで1位。石丸さんの近著 『超成長都市「福岡」の秘密』 (日本経済新聞出版社)では成長を遂げた理由が解き明かされている。

「FDCが何をしているのか知られていないので、その紹介もできればと(笑)。

 もともと福岡市は、海浜部に大規模工業団地をつくれず、典型的な支店経済で、数年で異動する転勤族の多い街でした。そのため飲食や小売りといったサービス産業を中心に発展してきました。私たちはその福岡の特徴を活かした成長戦略の支援をしています。具体的には学会や国際会議、ライブなど大規模なイベントの招致。外から人を招いて、福岡のサービスを消費してもらうのが、効率が高いんです。

 もう1つはスタートアップ企業の応援です。福岡市の支援や“国家戦略特区”の指定による減税や優遇措置もあって、クリエイティブなIT新興企業が福岡から次々生まれています。

 たとえば将来宅配サービスなどでドローンを利用することを見越して、個人の宅地の上空利用権を整理して“空の道”を整備するトルビズオンのサービス、ソラシェア(sora:share)は、神戸市や茨城県つくば市など福岡を越えて各地に広がりつつあります。またガンなどの病気の病理診断を最先端のAIなどでおこなうメドメインも注目の企業になっています」


石丸修平さん

 こうした企業からの要望を行政や住民と結ぶ手助けもFDCの仕事だ。

「すでにアメリカやドイツなどで展開している電動キックボードをシェアするサービスの実証試験を昨年からしています。公道だとハードルが高いので、九州大学の広大なキャンパスを利用して実験することにしました。

 また自動運転バスの試乗体験や実証実験のイベントも行っています」

 石丸さんは、FDCのような試みが他の地域にも広がることを期待している。

「福岡は、お客さんのおもてなしや、あるいはエンターテインメントなどサービス産業の多様さが地域の特徴でした。いっぽうで東海地方の浜松にはモノづくりの得意な企業がありますね。阪神間ではヘルスケア企業が昔から強い。地域によって産業の構造が違っていますから、今後はそれぞれの強みを活かしつつ都市間で連携していけたらと考えています」

いしまるしゅうへい/1979年、福岡県生まれ。経済産業省、コンサル会社プライスウォーターハウスクーパースを経て、2015年、福岡地域戦略推進協議会事務局長に。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年5月7日・14日号)