「文在寅大統領は徴用工にお金を渡せ!」被害者団体の訴えが韓国社会で黙殺されている――2019上半期BEST5

韓国政府が補償をケチったことで……

 2000年代初頭、韓国政府は被害者の補償に取り組んだ過去がある。盧武鉉大統領は真相糾明法を制定し、同法に基づいて戦争被害者遺族には2000万ウォン(約200万円)、生存者には月8万ウォン(約8000円)の年金を支払うことを決めた。しかし、その経緯が後にシコリを残すことになるのだ。

「当時、太平洋戦争犠牲者遺族会は戦死者遺族に対しては5000万ウォン(約500万円)を補償するという案を政府に提出していた。この遺族会案は国会も通過し決定したと思われたのですが、盧武鉉大統領がこれを差し戻した。結局、補償金額は半額以下の2000万ウォンにディスカウントされてしまった。

 日韓基本条約では韓国国家予算・数年分(当時の貨幣価値で)ともいわれる巨費が支払われた。それが時代を経て、補償金からわずかばかりの“お見舞い金”に変貌してしまったことに憤りを感じている遺族が多い。多くの被害者や遺族は韓国政府の補償案に納得していなかったのです」(遺族会関係者)

 前述したように生存者には月8万ウォンの年金が支払われた。しかし、この案は、金額があまりにも安すぎるという批判が強かった。

 こうした感情が徴用工裁判のバックグラウンドとなった。戦争生存者という枠組みには徴用工として日本に駆り出された人々が含まれている。不満を抱える徴用工被害者や遺族の一部が、反日市民団体らと連携した日本企業向けの徴用工裁判へと向かったのだ。つまり韓国政府が補償をケチったことで問題は解決されないどころか、複雑化してしまったのだ。

「韓日関係を悪くするような市民運動家とは違います」

 一方で、韓国政府が補償を疎かにしてきた経緯を当事者として見つめてきた大多数の被害者・遺族は、改めて正当な手続きを踏むことを模索し始めていた。補償問題は、第一次的には韓国政府が対応すべきだ、との声を強く訴えるようになったのである。

「私たちは実被害者として韓国政府に補償を求めています。韓日関係を悪くするような市民運動家とは違います。韓日が背を向けたままで日帝時代の話をして、何の意味があるのでしょうか。問題は何も解決しません」(キム氏)

 日本大使館前で慰安婦問題の支援者らが行う「水曜日デモ」は、日韓メディアの間で有名になった。しかし、被害当事者による「火曜日デモ」の存在は知られていない。キム氏は苦笑いを浮かべながらこう語った。

「私たちを取材に来たのは、日本人記者のあなたが初めてです。韓国メディアの記者たちには、見て見ぬふりをされており、彼らが取材に来ることはありませんでした。太平洋戦争の被害者や遺族はみな高齢で、地方在住者も多い。彼らの声は消されつつあるのです……」


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