ヨーロッパで新型コロナウイルスの感染が最も深刻なイタリア。

 3月19日時点での死者数は3405人。中国が20日に発表した3248人を超えて世界で最も多くなっている。

 そしてイタリア全土の感染者数は41035人(19日時点)に達している。そのうち4割を占めるのが北部のロンバルディア州だ。中心都市はミラノで、ドゥオーモ (ミラノ大聖堂)やサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会などの観光スポットがあり、日本人にもお馴染みだろう。

 そのロンバルディア州に住み、普段はセリエAを始めとするヨーロッパサッカーを取材する神尾光臣氏が隔離生活の続く現地の様子をレポートする。


普段なら人で賑わっているはずの日曜朝10時のミラノ大聖堂前の広場にもほとんど人影がない ©ラウラ・ロマッツィ

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「我われ年寄りも努力をしなければならん……」

「隔離生活を送るのは簡単なことではない。しかし我々には、状況を悪化させるような行動を慎んで、この緊急事態をなんとか抑えようと頑張っている方々のお手伝いをする義務があるんだ。こういう理由で、我われ年寄りももう一つ努力をしなければならん。我われは脆いのだからね。

 何を勧めるかって? ステイ・ホーム、ステイ・セーフだ。頑固になっちゃいかんし、助けを頼もう。電話や他の機械もうまく使いながら、孤独と戦おう。それとあとは、努めて健康でいることだ。間違った生活習慣により命を落とす人はウイルス感染者よりも多い。それを忘れちゃいかんね」

 ジョバンニ・トラパットーニ。2002年のサッカー日韓W杯の時イタリア代表を率いていた監督は、3月17日に81歳の誕生日を迎えていた。指導者生活を退いてもなお、SNSでの情報発信に手を出すくらいバイタリティー溢れる彼は、自身のインスタグラムに冒頭のメッセージを掲げた。新型コロナウイルス (COVID-19)感染拡大を止めるために、ついに政府が全国に外出制限を出したイタリアの社会情勢に触れてのことだ。

死者の平均年齢は79.5歳、そのうち99%が持病あり

 3月11日に首相令が出され、サッカー・セリエAをはじめとしたスポーツイベントの中断、生活必需品を扱う分野以外の商店の営業禁止などが要請された。その根本とするところは『State a casa(家にいろ)』。特にお年寄りには、極力外出しないようにという勧告が出ている。トラパットーニ氏が住むのはミラノ近郊のクサーノ・ミラニーノ。イタリアのウイルス感染者の4割を占めるロンバルディア州にある街だ。誕生日も家族で集うことはせず、ビデオ通話でお祝いすることにしたのだという。

 19日にイタリアの感染者数は41035名に達し、死者数は3405人と人口が22倍の中国を抜いてしまった。地域によっては集中治療室のベッドが埋まり、他の地域に病人を搬送しなければならない状態になる中、行政や医療関係者からは感染を拡大させないための痛切な訴えがなされている。