新型コロナウイルスの起源をめぐり、中国の研究所から漏れ出たのではないかとの仮説が米国で急速に広がり始めた。日本のメディアではトランプ大統領が陰謀論に乗っかったとの見方がもっぱらだが、仔細に検討すれば、陰謀論どころか科学的根拠のある推論であることがみえてくる。トランプ批判の急先鋒だった米紙「ワシントン・ポスト」までが擁護する「ウイルス研究所起源説」の虚実を探った。


4月17日、米ホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領 ©UPI=共同

2年前、研究所に対し米大使館員が警告していた

《コウモリのコロナウイルスを研究する武漢研究所 「安全性を懸念」国務省が外交電で警告》

 そんな見出しの記事が米国の有力紙ワシントン・ポストに載ったのは4月14日のことだ。

 米国発の国際ニュースチャンネルCNNなどは、同紙の記事を引用しながら、トランプ大統領が新型コロナウイルス拡大を防げなかった責任論を避けるため、荒唐無稽な陰謀論を主張し始めた、というようなトーンで報道。日本メディアもその見方に相次いで追随したが、それは、読み込み不足だろう。

 ワシントン・ポストの記事の内容はこうだ。

 新型コロナウイルスによるパンデミック発生の2年前、米大使館員が中国中部・湖北省武漢市にある中国科学院武漢病毒研究所を何回も訪れ、2回にわたって不適切な安全管理について警告を発した。BSL-4(生物学的安全レベル4)に準拠した中国最先端の研究所はコウモリのコロナウイルスに関する危険な研究をしていた。

 コウモリのウイルスは人間にも感染する可能性がある構造をしており、SARS(重症急性呼吸器症候群)のようなパンデミックを新たに起こす可能性がある、とホワイトハウスへの報告は警告していた。

 しかも、研究所の所員らはこの大使館の専門家に対し、「研究所の安全性を保つための技術者や査察官が不足している」と訴えたという。記事はウイルスが「開発された」という証拠はなく、動物に由来することに多くの科学者が同意していることにも触れながら、動物由来のウイルスが研究所から漏出した可能性を否定するものではないことも研究者の発言を引用しながら伝えている。