2020年上半期(1月〜6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。国際部門の第5位は、こちら!(初公開日 2020年4月1日)。

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「止められなかった悪魔の生き方を止めていただいて、本当にありがとうございます」

 台本を読むかのような、淀みない口調だった。

 3月25日、「n番ルーム事件」の犯人のひとりの身元が公開された。もっとも残酷でおぞましいとされた「博士ルーム」を運営していたチョ・ジュビン(24歳)は鍾路警察署の正門に姿を現わすと、200人ほどの報道陣を前に質問には答えず、言いたいことだけを淡々と語った。性犯罪容疑者としては異例の身元公開だった。

 チョの容疑は、児童猥褻物制作と強制性交、脅迫、強要、詐欺など全部で7つ。

「n番ルーム」とは、サイバー空間に作られた複数のチャットルームの総称で、「博士ルーム」はその中のひとつ。チョの共犯として13人も検挙された。


警察署の留置場の洗面所に頭をぶつけて自害行為をしたと伝えられたチョ・ジュビンは、首にはギプスをはめ、頭には絆創膏を貼って現われた ©AFLO

 チョは2018年9月から「博士ルーム」を運営していたとされ、ここで、未成年者を含む女性の性的写真や動画などを流布し、閲覧させることで、数億ウォン(約数千万円)もの大金を稼いでいた。家宅捜索では、自宅から1億3000万ウォン(約1300万円)の現金が見つかっている。

「博士ルーム」では、女性は「奴隷」

「博士ルーム」の中は、写真や動画の内容別にさらに3つのチャットルームに分けられていた。「お試しチャットルーム」は無料だが、そこで好奇心をくすぐった後、各ルームに誘引。写真や動画の内容により、入場料は、20万ウォン(約2万円)から150万ウォン(約15万円)」と引き上げられていく仕組みだった。会員は1万人ほどといわれたが、その後の捜査で、チャットに参加した1万5000人ほどのハンドルネームを警察が押収している。

 被害女性は確認されているだけで74人。この中に未成年者は16人いた。

 手口は卑劣だった。チョは、SNSに「高額スポンサー、アルバイト募集」のような文言をアップし、問い合わせをしてきた女性に「簡単なアルバイト」と説明した後、顔と手が映った写真を送るよう促したという。

 写真が送られてくると、ハッキングや役所で働く人物を使って女性の身元を調査し、確認。その後、今度は性的な写真を送ることを要求した。相手が断ると、身元情報を入手していることをもとに脅迫。性的な写真を送るよう指示し、さらには、人を使って女性を暴行するなどした映像を撮影し、「博士ルーム」で流していた。

 会員は入場料をそうした映像製作の“支援金”と嘯(うそぶ)いていたという。「博士ルーム」では、女性は「奴隷」などと呼ばれ、蔑まれた。