【JAPAN style】東京五輪へ遠隔通訳に脚光

 ■安価で多言語対応、小売りなど相次ぎ導入

 訪日外国人客数が過去最高水準で推移する中、タブレット端末などを利用した24時間遠隔通訳サービスが脚光を浴びている。小売り、観光関連企業が外国人客に対応するには、外国語に堪能なスタッフが必要だが、費用などの面で限界があった。これに対し、新たな通訳サービスは、わずかな利用料を払えば、多くの国の言語にいつでも対応できる。東京五輪開催で訪日客が一段と増加する2020年に向け、普及に弾みがつきそうだ。

 ◆利酒師に代わり接客

 東京・神田に今年5月、日本酒を専門に扱う酒販店「和酒や」がオープンした。地方の中小酒蔵からこだわりの逸品を取り寄せ、試飲(有料)しながら気に入った日本酒を選んでもらう販売手法をとる。

 オープン当初から訪日客をターゲットにしていたが、飲み手の要望などから好みの日本酒を見つけ出す「利酒師」の資格を持つスタッフも、外国語で酒造りならではのうんちくを傾けることは難しい。

 こうしたとき利酒師に代わって接客するのが、インデンコンサルティング(京都市中京区)が12年1月から提供している遠隔通訳サービス「SMILECALL(スマイルコール)」だ。

 店頭スタッフがタブレット端末を見ながら言語を選択して通訳者を呼び出すと画面に現れ、映像を見ながら通訳が始まる。電話での音声通訳や文字の翻訳、定型文では伝わりにくい細かなニュアンスも伝えられる。笑顔で接客してくれるので訪日客にも好評だ。しかも月額1万4000円(初期費用3万円)の定額制なので利用頻度が多くても安心できる。

 和酒やの飯村明良社長は「英語での説明は多少できても、中国語や韓国語では無理。店の規模から言語スタッフを雇うのも難しい。そんなときに5言語対応のスマイルコールを知った」という。

 訪日客は産地や製造方法などの商品説明を母国語で聞いた上で試飲して購入するので満足して帰るという。和酒やの売り上げにも貢献しており、開始したばかりの電子商取引(EC)にも生かす考えだ。飯村氏は「訪日客に安心を与えるスマイルコールを武器に、『リアル店舗で安心購入し、帰国後にECサイトでリピート』のパターンをつくる」と意気込む。

 宿泊施設として訪日客に人気なのが日本特有のカプセルホテル。東京・新宿や新橋などに5店舗を展開する「安心お宿」は6月、増加する訪日客へのおもてなしの一環としてスマイルコールを全店に導入した。

 プレミア新宿駅前店の庄司勇介支配人は「通じて当たり前の言葉の問題が解決できた。外国人もスタッフもストレス軽減につながり、フロントが渋滞することもなくなった」と喜ぶ。秋葉原電気街店では「中国語でイレギュラーなサービスを求められたときにも臨機応変に対応できた」と評価。24時間つながるのも宿泊施設には魅力的だ。

 訪日客の売り上げが半分近くを占めるメガネチェーン「パリミキ・メガネの三城」でも遠隔通訳サービスが大きな戦力となっている。

 ◆購買促進にも一役

 チェーンを展開する三城(東京都港区)によると、「サングラスを買い求める中国人が多いので、通訳を介して店員は中国語を覚えていく」(営業企画担当の布袋田(ほていだ)和貴氏)というほど遠隔通訳サービスの利用頻度は高い。サングラスやメガネの注文時のほか、度数やデザインの調整も円滑に行える。詳細で突っ込んだ商品説明もできるので購買促進にも役だっているという。

 三城はスマイルコールの他、免税店向けにはポリグロットリンク(東京都豊島区)の「テレビde通訳」を導入している。同社は遠隔通訳サービスの草分けで、現在はベトナム語やネパール語など同業他社より圧倒的に多い12カ国語に対応する。

 ポリグロットリンクの橋本直紀社長は「通訳は中国人の爆買い対応から、観光や仕事で来るベトナム人やネパール人への対応に移っている。しかし外国語スタッフを入れ替えるのは簡単ではない。テレビde通訳なら訪日客の95%をカバーできる」と強調する。料金は従量制を採用、必要なときに呼び出せるので気軽に使えるのが売りだ。

 ビザ(査証)が不要になったタイからの訪日客増加を見越して業界で初めてタイ語対応を始めたのがアイ・ティー・エックス(横浜市西区)。「みえる通訳」(8カ国語対応)の名称で14年9月に提供を始めた。

 料金は使い放題の月額制だが、無料オプションとして「さわって通訳」を用意。免税手続きなど定型文で対応できそうなときは画面を指で触って文字と音声でスピード対応。解決できないときはワンタッチで、みえる通訳に移行し映像を見ながら案内する。

 さらに新サービスとして業界初の医療通訳オプション(定額制)を追加。症状の説明に専門知識が必要な場合に対応可能だ。JMIP(外国人患者受け入れ医療機関認証制度)取得病院を中心に導入が増えている。

 小売店や宿泊施設などは、増え続ける訪日客の呼び込みに躍起で、そのために言語スタッフをそろえるが「1人で多言語対応できるスタッフはいないし、採用できても営業時間のすべてを任すことはできない」(飯村氏)。こうした懸念を払拭できるのが遠隔通訳サービスといえ、言葉を通じないストレスを抱える訪日客を迎え入れる大きな武器となりうる。(松岡健夫)

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