目を疑う光景だった。

バンタンデザイン研究所

彼女たちの目の前に広がる、身長よりも高く積みあげられた服。中には、まだまだ着られるものがたくさんあった。

ここはNPOが運営する福島県内の倉庫だ。人々が着なくなった服を集め、仕分けて、リサイクルやリユース、そして支援物資として海外発送などを行う。

集まる衣服の多くが、最新の流行を素早く取り入れ、大量に生産されて低価格で売られる衣服。いわゆる「ファストファッション」だった。

「倉庫で、古着を仕分けるボランティアをしたんです。どんなに作業しても、夕方には大量の服がまた運び込まれてきました。服飾学生としても、未来の作り手としても、この現実はかなりショックでした」

そう話すのは、専門学校「バンタンデザイン研究所」2年の女子学生たちだ。

こういった経験をもとに、卒業制作の一環として、福島に集められた古着に手を加えてオリジナルの服を制作し、ファッションショーを開こうとしている。

BuzzFeed Newsは彼女らに話を聞いた。


大切なのは思い。

Reona Hisamatsu/BuzzFeed

(左から山口京子さん、野宮清香さん、小松遥香さん)

企画に関わる1人である野宮清香さんは「今の若者たちが、ファストファッションを買うのは、理解できます」と話す。

「お店はどこにでもあって、ほしいと思ったらすぐ買える。SNSで発信されるコーディネートを簡単に真似もできます。デザインも流行をすぐに取り入れるし、クオリティもそれなりですから」

「中高生の頃は、GUや他のファストファッションが流行り、服を買っていました。『卒業制作どうする?』って話していた時期には、FOREVER21が日本から撤退して、『生地買えないじゃん!』とも言っていました」

みんなファストファッションの服を買っていたし、授業内でその生地を使ったこともあり、その魅力は知っている。だが、福島で見た古着の山を見て、自分も手軽に服を買い、あの山を積み重ねたくないと思うようになった。ファストファッションを買うのはやめた。

そして次第に、メンバー全員が古着に目を向けるようになった。なぜか。

高校生の頃から古着が好きな野宮さんは、「古着にはバックボーンがあるんです」とその魅力を語る。

「作られた時代、貴重なシルエット、限定のもの...。値段にも理由があるんです。私が特に好きなのは、裏に元の持ち主の名前が書いてある服です。どこかの国の女の子の名前が書いてあるんですよ」

「バックボーンがあるから、将来、自分の子どもができたら渡したいなと思うものを買うようにしています」


新しい服の選び方を。

Carterdayne / Getty Images

古着には、驚くほど安く、良い品質で、長く使えるものも多い。

そんな魅力に目を向けながら、彼女たちが意識するのは「エシカル消費」だ。人や社会、環境に配慮した消費行動を指す。

福島で高く積まれた衣服を見たメンバーの小松遥香さんは言う。

「ここを気に入った、作り手がこういう作り方している、低賃金で作られたものでない、などの考え方に基づいた服の買い方が普及していってほしいんです」

「昔の時代みたいに、みんながものを長く使い、新しいもの、1つのものを愛することを美徳とする時代になったら良いですね」

ファストファッションの衣服を買っても、「それに思い入れがあれば、エシカル消費」だという考えを野宮さんは持っている。


知らなかったファッション業界の現実。

getty images/時事通信

本当に必要な衣服だけを買い、大切に長く使い続けてほしい。そして、できれば古着を買うようにしてほしい。彼女たちは、そんな思いで古着を使った卒業制作に励む。

学校でファッション業界について勉強を重ねる中、知ったのは、消費者が見ることのない一面だった。

大量生産・大量消費・大量廃棄。その裏には、経営難で自ら死を選ぶコットン農家、ウールのもとである羊への残酷な処置、バングラデシュで起きた1000人以上の労働者が死亡した縫製工場の崩壊事故(2013年)があった。

ファストファッション業界を支える労働者や動物たちの一部で起きる現実に、小松さんはショックを受けた。

「当事者から話を聞くこともでき、泣きそうになりました」

そこで、今回の卒業制作展では、講師とも話し合い、すべての素材に古着を使うことにした。山口京子さんは、そう決めた当時を振り返る。

「例年、卒業制作展ではインパクトを求められる傾向があります。ですが、講師に『インパクト勝負じゃないよ。作品を制作した人には、どんな技術があり、どれほどの熱を込めて作ったかが、観客に伝われば良い』と言われて。ハッとしました」


本番まであと少し。行動に移すきっかけになれば。

バンタンデザイン研究所

卒業制作展は2月23日、渋谷で開催される。

まもなく迎える本番を前に、山口さんは「これから未来を作っていく同世代の人が、何か行動に移すきっかけになれたら」と意気込む。

「ランウェイショーは、『廃墟となった衣服の工場跡地』という設定で、自分たちの作品を着てステージを歩くんです。ブースでは、作品の展示・販売を予定しています」

すべての作品が、前述の福島の倉庫で譲り受けた古着を使う。そうして作品を制作する中、彼女たちは現在、クラウドファンディングにも取り組む。

集まった金額は、卒業制作展でのチャリティーブースでの販売品や、ショーを実施するにあたってのコストなどに充てられる。一部は、2011年の東日本大震災以降、9年間続けている東北支援や、19年の台風被害が大きかった福島県いわき市への支援活動費などに活用する。

これまでクラウドファンディングは、卒業制作展に向けての制作費を募るために利用していた。しかし、今回、初めて社会貢献を目的として生かしたいという。