<白球> 使い古したグラブ弟が継いだ思い 成章・小久保投手

<白球>  使い古したグラブ弟が継いだ思い 成章・小久保投手

 七回1死満塁。同点の1点、さらに勝ち越しの1点を許し、なおピンチが続く。成章の小久保椋投手(三年)は、使い古したグラブを見つめた。「兄ちゃんの借りを返したい」。気持ちが引き締まる。連続で三振を奪って、この回を終えた。
 四つ年上の兄克樹さん(22)も成章の野球部出身。肩が強くて球速のある投手だったが、マウンドに立つと球を投げられなくなった。父勝さん(45)の影響で、幼いころから野球に親しんできた兄弟。投手を断念せざるを得なかった兄の無念は、弟にも伝わっていた。
 尊敬する兄の夢を受け継ぐように、克樹さんのグラブを使い続けた。ピンチになればグラブを見る。兄弟を支え続けてくれた両親のためにも活躍したかった。
 克樹さんとは普段は野球の話をするわけではないのに、試合には駆け付けてくれる。八回、最終打席に入る前も、スタンドから「打てよ」と兄の声が聞こえた。
 七回を投げきったが、チームはあと一歩、勝利に手が届かなかった。弟の勇姿を見つめた克樹さんは「小さいころからずっと見てきた。素直にかっこいいと思います。ありがとう」とたたえた。
 小久保選手は試合後、泣き崩れ、しばらくは顔を上げることができなかった。ただ、野球を通して仲間たちと出会い、兄の思いも背負ってマウンドに立った。「今日の試合だけ見たら悔いはある。でも、これまでの野球に悔いはありません」。日に焼けた顔で仲間たちと笑い合う。もう、表情に曇りはなかった。 
 (中山梓)

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