夢かない「光栄」 福井の川田さん、歌会始入選

夢かない「光栄」  福井の川田さん、歌会始入選

 十二日に皇居で開かれた歌会始の儀に入選し、短歌が詠み上げられた福井市の電気工事会社役員、川田邦子さん(70)。終了後の会見では「長年の夢がかなって、つらいこともたくさんあったけれど、生きていて良かった」と振り返った。
 川田さんの歌は「突風に語尾攫(さら)はれてそれつきりあなたは何を言ひたかつたの」。
 川田さんは二十三年前、二人で家業を大きくしてきた夫の春義さんを四十八歳の若さで、亡くした。歌は、春義さんが亡くなる二カ月前の一九九五年六月、肝がんの治療のため高知県内の病院へ転院する朝の情景を詠んだ。
 家の前を出発するとき、春義さんは「会社を頼む、両親を頼む、そしておまえも」と言いかけたが、突風で声がかき消されてしまった。川田さんは聞き返したが、春義さんは「厳しくも悲しそうな顔をして、突風を契機に口をつぐんでしまった」という。
 川田さんによると、出発した日の春義さんの日記には「邦子にはいろいろ苦労をかけた。頑張って治して帰るのが、あいつにできる恩返し」と書いてあったという。「それ以上言うと自分が泣いてしまうのが怖かったのだと思うが、私へのいたわりや感謝を言いたかったのでは」と思いやる。
 皇居・宮殿「松の間」で歌が詠み上げられた時は「自分の歌ではないような、とても不思議な感情があった」と振り返る。「未知の世界へ一歩踏み入れられたことがとても光栄」と喜ぶ。
 皇后陛下に尋ねられ、春義さんが一度は小康状態になり福井に戻ったものの、同年八月に亡くなったことを伝えると「それは大変でしたね」と声を掛けられた。天皇陛下からは「体に気を付けて頑張ってくださいね」と励まされたという。
 春義さんには「歌はあなたとの合作、ありがとう」と報告したいという川田さん。今後に向けては「働きながらで、なかなか時間がとれないが、これからもさらに詠んで深めていきたい」と意気込んだ。

 (片岡典子)

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