ゴリラやアジアゾウなど絶滅の恐れがある動物の飼育数増加に向けた糸口をつかもうと、東山動植物園(名古屋市千種区)は昨年12月、イケメンゴリラとして人気の「シャバーニ」を担当する飼育員伊東英樹さん(48)を上野動物園に派遣した。東山と東京動物園協会が昨年2月に結んだ協定に基づく第1号で、エサやりやトレーニングに関する情報交換などを行った。
 派遣期間は十二月一〜五日の五日間。上野動物園は、東山の五頭を上回る七頭のゴリラを飼育しており、シャバーニの兄ハオコが群れのおさを務めている。
 主に学んだのは、ゴリラの健康管理に関するトレーニング。オスゴリラはストレスに弱く、心疾患による死亡数の多さが世界的に問題になっている。定期的な心音確認が望ましいが、力の強いゴリラとは柵を隔てていないと危険な上、毛の少ない胸は体の中でも特に敏感とされ、簡単ではない。
 東山では二〇一八年六月、獣舎引っ越しのため麻酔を打った際に心臓のエコー検査を実施したが、設備の問題もあり、日常的な検査には至っていない。
 一方、上野では週三回、心臓のエコーを撮って獣医師が経過観察をしている。行為に慣れさせることはもちろん、カキやバナナ、豆乳などゴリラが喜ぶエサを褒美として与えることで、うまく実施できているという。
 エサやりの方法も異なる。東山では毎日十種類ほどの野菜を一度に与えているが、上野では二種類ずつを複数回に分けて与える。東山の方法では、ゴリラたちが自分の好きなエサを選べる一方、強い個体が好物を独り占めする可能性がある。仕入れの問題があり、上野の方法を即座に取り入れることは難しいが、「選択肢の一つ」に加わったという。
 現在、国内にいるゴリラは大半が血縁関係にあるため繁殖のハードルは高い。輸入規制も厳しいため、個体数の維持が課題となっている。伊東さんは「今いるゴリラたちには、健康に長生きしてほしい。上野とつながりができたので、今後は電話やメールで気軽にやりとりしたい」と話した。
 両園では今後、アジアゾウなど異なる動物の飼育員らも相互派遣する予定。東山の茶谷公一・動物園副園長は「『鎖国状態』では技術向上は図れない。今後も交流を拡大し、飼育員同士、創意工夫したアイデアを共有し合ってほしい」と期待する。
 (松野穂波)