名張市の業者が不正軽油の密造・販売をしていたとされる脱税事件で、背景の一つに業界でのガソリンや軽油の激しい価格競争があるとの見方がある。県は摘発に力を入れるが、一見して不正と分からないよう細工を施すなど手口は巧妙化しており、不正は後を絶たない。
 「どれだけ売っても経営は厳しい」。県内の大手元売りの特約店を経営する男性は嘆く。四日市市内に製油所がある県内では、運送距離が短く流通コストがかからない分、安値での販売が可能になるという。「他店よりも一円でも安くしないと客は来ず、一方で、売り上げは伸びても利益は出ない」と明かす。
 知り合いの同業者は、経営難でガソリンや軽油にかかる税金を滞納したり、利益確保のために灯油を混ぜて販売して摘発されたりしたという。「経営が成り立たず、低価格競争に耐えかねて不正に手を染めるしかなかった事情もわかる」と声を落とした。
 関係者によると、今回摘発された名張市の石油製品販売業「関西エネックス」は、閉店した給油所を活用し、十年ほど前から営業を始めた。主に運送会社を販売先として取引していたという。近くに住む高齢男性は「タンクローリーが燃料を入れたり、大型トラックが洗車したりするのをよく見かけた」と話す。
 県警によると、逮捕された同市赤目町丈六の石油製品販売業井上聡容疑者(50)は、給油所の地下タンクの軽油に軽油引取税のかからない灯油を混ぜて水増し。市場価格よりも安い価格で販売していたとされる。
 県によると、不正軽油の密造は、重油に灯油を混合することが多かったが、近年は灯油に軽油を混ぜる手口が主流に。今回の事件と同様、不正防止の識別剤「クマリン」を灯油から除去し、一見して不正が分からないようにしたケースも目立つという。
 県が昨年、二十七回実施した路上での燃料抜き取り調査では、計二百八十五台のうち四台で不正軽油の使用が疑われた。年間千社を対象に実施している給油所や運送会社のパトロールでは二〇一六年度に八件、一七年度に三件の違反が発覚した。県の担当者は「規制を強化しているが、いまだにゼロになっていない」と危機感を強めている。

 (斉藤和音、渡辺雄紀)