福井市のミュージックバー「Bar jake(バー・ジェイク)」のマスター芹沢信治さん(39)が昨年末、店が入居するビルを丸ごと買い取った。空きテナントにホールを設けるなど、ミュージシャンやアーティストが集う場所に生まれ変わらせる計画。「若い子たちが何か新しいことをやろうとする時、行ってみようという場所になったら」と夢を描く。
 福井市の繁華街、片町の一角に地下一階、地上三階建ての「ドリームタウンビル」はある。「バー・ジェイク」は二階。ステージがあり、芹沢さんの演奏や客らとのセッションを楽しめる。オープンから十四年。ロックバンド「シーナ&ロケッツ」の鮎川誠さんや竹原ピストルさんら有名ミュージシャンも訪れた。
 芹沢さんは十六歳の時、栃木から上京し、弾き語りを始めた。十八歳の時、アコースティックギターを手に全国をヒッチハイクの旅に。札幌市のミュージックバーで洋楽を聞きながら仕事をし、ライブをこなすうちに「米国で生の音楽を見たい」と思いを膨らませた。
 福井にたどり着いたのは偶然だった。二十三歳の時、資金を稼ぐため、越前市の会社で半年ほど働いた。しかし、直前に米国を大型ハリケーン「カトリーナ」が襲い、断念。音楽仲間のアドバイスで、二十五歳で「バー・ジェイク」を構えた。当時は知人も少なく、自信もなかったが、人のつながりで客が増えた。
 オープンから三年後、三カ月の渡米も実現した。帰国後、常連で音楽仲間の建築士の勧めをきっかけに、店内を改装しステージをつくった。音楽仲間たちが手弁当で集まった。その後、二度目の改装もした。かけがえのない場所になった。
 築五十年ほどのビルの取り壊し方針を知ったのは二年ほど前。一度は別の場所に移ることも検討したが、融資を受けビルを購入することにした。「店は仲間でつくってきたという思い入れの強さが一番大きい。他の場所を見て回っても、新しい店をやる気持ちにならなかった」。音楽活動を共にし、店にも関わる妻野々花さん(35)は「福井に来て、このビルでスタートし、改装して、思い出が一番強いのは信治さん。不安はあるけれど信治さんの夢に乗ることにした」と話す。
 計画では、外壁にミュージシャンの絵を描き、三階にステージ付きのホールを、地下一階にはバンドなどが使えるスタジオを設ける。ホールは演劇やライブ、各種パーティーなどにも使うことができるようにする。二階には昭和歌謡バーやアートスタジオ、一階にはラーメン店や鉄板焼き屋が入る予定。スタジオ以外は五月オープンを目指す。
 片町に人が少なくなっていることが気にかかる。芹沢さんは「若い子もミュージシャンも、もっとまちに出てきてほしい。出やすい、行きたくなっちゃうようなビルにしたい」と意気込む。
 改装への支援を四月末まで募っており、支援額に応じ、芹沢夫妻が中心となるバンド「Asobi gokoro」のCDなど特典を贈る。目標額は五百万円。(問)芹沢さん=090(4167)2735
 (鈴木啓太)