NHKの高校野球解説者で、JR東海野球部元監督の大矢正成さん(60)が十一日、飯田市松尾公民館で講演した。愛知・東邦高時代は“バンビ”こと坂本佳一投手と組んで一九七七(昭和五十二)年の夏の甲子園準優勝を果たした名捕手。高校時代から聖地・甲子園で解説する今までの思い出を話した。
 「人の出会いが道を拓(ひら)く」と題して語った大矢さんは、まず中学三年の時、高校時代の恩師、阪口慶三さん=現大垣日大高監督=から東邦に勧誘されたエピソードを紹介。地元の進学校を目指していたが「何度も実家に足を運ぶ監督の情熱に圧倒され、周囲の猛反対を押し切って東邦に進んだ」。
 入学後に上級生らの暴力問題が発覚し、一年間の対外試合禁止処分を受けた。つらい日々。それでも再び甲子園の夢に向けて前を向けたのは、母親の支えがあったからと振り返った。
 三年時の甲子園。決勝でサヨナラ弾を浴びたが、全国で最も長い夏を楽しんだ。人気を集めた一年生エース坂本投手のために、警察と肩を組んでバリケードを作り、球場外に出したという話にも触れ、「野球に打ち込む過程で多くの人と出会い、それを通じて可能性が広がり、夢を追えた」と話した。
 引退後の目標だった甲子園での解説も、NHK名古屋放送局の高校野球解説をしていた時に出会ったアナウンサーとの縁だったと明かした。
 講演会は、飯田OIDE長姫高校野球部OB会主催で、現役選手や関係者約百が参加した。大矢さんは最後に「お金があればたいていの物が手に入る時代。そんな世の中だからこそ簡単には手に入らない夢を追うことは大切」とも訴えた。

 (伊勢村優樹)