石川県小松市の社会福祉士、塩崎文彦さん(44)が、認知症への理解を深めるためのクイズカフェ「クイズスペース モア」を毎月、JR小松駅近くで開いている。暗いイメージが先行しがちな認知症だが、「初期なら周りの少しの手助けで普通に生活できる」。偏見をなくし、生きやすい社会の一助にと、好きなクイズを生かす。(長屋文太)
 芸能や歴史、文学まで幅広いジャンルの問題を塩崎さんが読み上げる。「ピンポンッ」。赤や緑の早押しボタンのランプが点灯するたび、クイズ番組でおなじみの音が響く。「正解」「残念」と、塩崎さんが告げ、問題は次々と進む。
 「実はこんな活動を…」。クイズが途切れると、認知症サポーター養成講座の講師「キャラバン・メイト」と明かす。「認知症の当事者が書いた本なんです」と言って、店内の本を紹介し、客の身近に認知症の人がいると分かれば、相談窓口を教える。カフェは不定期の土曜日昼、塩崎さんの母親が営むスナックを借りて開いている。
 塩崎さんは、小松市の高齢者総合相談センターのケアマネジャー。大学の福祉学部を卒業し、会社員を経て、十五年前から福祉に携わる。衝撃を受けたのは三年前、三十九歳で若年性認知症と診断された丹野智文さん(45)の著書。認知症になっても明るく、講演や旅行に出掛ける姿を知り、「当事者の思いや自己決定権が何より大切」と知らされた。
 認知症は、周囲に知られるのを恐れ、家にこもると、病院の受診も遅れ、症状が進行する可能性がある。「認知症をわが事と捉えてほしい」。街中に、楽しく通える認知症カフェがあればと思い立った。学生時代に「高校生クイズ」「アメリカ横断ウルトラクイズ」など有名テレビ番組に出演したクイズ好き。「自分が認知症になっても通える場所に」と、二〇一九年一月、モアを開いた。
 二年目に入ったモアは、北陸では珍しいクイズカフェ。認知症の人はまだ来ておらず、純粋にクイズ目的の客が大半だ。塩崎さんは「クイズ初心者にはハンディを付ける」。存分にクイズが楽しめる空間と自負しながら「ちょっとした会話から認知症を知ってもらう場に」と話す。
 次回は、三月二十日午前十一時から午後四時。インターネットで「クイズ モア」で検索すると、ホームページにアクセスできる。
【メモ】認知症カフェ=認知症の人や家族、地域住民、介護従事者などが情報交換や交流のため集まる場所。国が設置を推進している。社会福祉法人、自治体などが公民館や飲食店などで月1回ほど開くことが多い。2018年度時点で、全国に約7000カ所ある。