名古屋市は石垣を軽視している−。名古屋城天守の木造復元事業で、専門家からそんな指摘が相次いでいた国の特別史跡の石垣について、市は二〇二〇年度当初予算案に魅力発信の事業費一千万円を盛り込んだ。木造復元の実現に向け、「石垣重視」の姿勢を打ち出す狙いがあるという。
 「建設議論ができない」「これで文化庁が許可するわけがない」。昨年八月に開かれた有識者会議「石垣部会」では、市が石垣の保全よりも、二二年末完成という木造復元事業の工期を優先しているとして、委員から厳しい意見が続出した。その後、市は工期撤回に追い込まれた。
 反省を迫られた形の河村たかし市長は昨年十一月に「石垣ファースト」を宣言。石垣保全を訴える部会に歩み寄る姿勢を鮮明にした。部会側も矛を収め、木造復元に向けた石垣保全策を市とともに検討し始めている。
 こうした流れの中、市は二〇年度、専門家を集めたシンポジウムや親子クイズラリーなどを通し、名古屋城の石垣の魅力を学んでもらうイベントを開く。ともに戦国武将の加藤清正が手掛けたことで知られる名古屋城、熊本城の石垣を比較するなどの基礎研究にも着手。石垣調査担当の学芸員も五人から八人に増やす。
 「石垣を活用した文化事業はこれまで本格的には行っていなかった。真面目に取り組んでいることが伝われば」と市名古屋城総合事務所の担当者。市は部会や文化庁とともに木造天守の新たな完成目標の検討も進めている。
 (水越直哉)