新型コロナウイルスの感染拡大は、四百年以上続く伝統行事も中止に追い込んだ。飛騨市古川町の気多若宮神社の例祭「古川祭」の主要行事中止を受け、祭り関係者や宿泊業者から落胆の声が上がった。
 二十日に同神社であった会見で、氏子総代長の杉下豊さんは「やってくれという声もあったが、今年は我慢して来年頑張ろうと決断した。祭りの二日間の経済的損失はあるだろうが、感染が発生したら今後数カ月間、飛騨全体に影響が及んでしまう」と説明した。
 今年の起し太鼓主事「白虎(びゃっこ)組」の責任者「総司(そうつかさ)」に決まっていた柳七郎さんは「悔しい思いはあるが、仕方ない」と肩を落とした。起し太鼓と屋台組の主事は来年に持ち越すことも決まり「プレッシャーは大きくなるが、しっかり務めたい」と話した。
 主要行事の「起し太鼓」や屋台巡行などの中止は十九日夜、氏子総代や各屋台組の関係者らが参加した神社総役員会で決まった。やぐらに載せた大太鼓を目がけて裸の男たちが激しくぶつかり合う起し太鼓は、濃厚接触が避けられず、市民病院の感染症対策専門の医師から「開催を控えるべきだ」との助言もあった。
 屋台巡行のみの実施も検討したが、囃子(はやし)を担当する子どもたちも休校措置で練習がままならず、神事のみ行うこととなった。感染拡大の終息を見込んで秋に延期することも検討したが、他の祭りや農作業などで日程に余裕がなく断念した。
 一方、同市古川町の旅館「八ツ三館」では、古川祭当日の予約は五年後まで満室という。池田孝吉館長は「東日本大震災で主要行事が中止になった時は三分の二がキャンセルになった。今回も同じだと経営にかなりこたえる」と話した。
 神事は十九日午前、規模を縮小した上で「奉幣祭」を開く。屋台の公開やからくりの披露は、それぞれの屋台組の判断に委ねる。
 (瀬田貴嗣)