花見シーズンを間近に控える中、県内の桜の名所に異変が起きている。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各地で宴会の自粛を呼び掛けたり、屋台の出店を中止したりする動きが広がっており、例年のにぎやかな光景は見られそうもない。書き入れ時を迎えるはずだった観光関係者からは悲鳴が上がっている。
 本巣市の国天然記念物「淡墨桜」では、風物詩となっている夜間のライトアップ自粛を市が決定。花見客の長期滞在による感染拡大を防ぐため、桜がある淡墨公園に宴会自粛の張り紙を掲示した。市道占用や公園使用の許可を出さない方針で、例年三十店ほどが並ぶ出店も今年はない。
 最寄りに樽見駅がある樽見鉄道は、開花シーズンは特別運行の「桜ダイヤ」で列車を増発する。それでも例年、車内がぎゅうぎゅう詰めになるほどの人気だが、バスと鉄道を組み合わせた花見ツアーのキャンセルが相次いでいるといい、担当者は「普段鉄道を使う個人客も、今年はマイカーになるかも」と予測する。
 淡墨桜の再生保護を訴えた作家・故宇野千代さん(一八九七〜一九九六年)の定宿だった老舗旅館「住吉屋」(本巣市根尾市場)代表の小野島史郎さん(71)は「個人の予約は少しずつ入ってきているが、グループや団体客は軒並みキャンセルになった」と明かす。にぎわうはずの開花シーズンに影響が出て「経営は最悪。今すぐにでも終息してほしい」と願う。
 約二百本の桜がある恵那市の恵那峡は六年にわたる市の再整備事業の完成が近づき、二十九日にリニューアルオープンを控えている。全国の名所の関係者が集い、門出を飾るはずだった四月九、十日の「全国さくらシンポジウム」は規模を縮小し、九日の「さくら花火大会」は中止する。市観光協会の小栗康正事務局次長は「何の因果でこんなタイミングに…」とため息を漏らし、「ライトアップは例年通り実施する。せめて個人で楽しんでもらえれば」と話す。
 各務原市は新境川堤で開かれ、三十万人が訪れる市最大のイベント「桜まつり」を中止し、宴会の自粛を呼び掛けている。多治見市も虎渓公園のバーベキュー場の予約を受け付けず、来園者に宴会自粛を要請。寺尾ケ原千本桜公園がある関市は、例年ホームページに写真付きで掲載するなどしていた開花情報の発信を取りやめる。
 (秋田佐和子、立石智保)