パラオには実は、ごみの焼却施設がない。
 人口二万人程度では、施設の稼働率を維持できるほどの量は排出されず、建設費や維持管理費などのコストにも見合わない。だから、可燃物も不燃物もごちゃまぜで「ゴミステバ」と呼ばれる集積場に積まれたままか、最終処分場に埋め立てられる。
 コロール島にある現行の最終処分場は、収容量が限界に近づいている。国際協力機構(JICA)の無償資金協力で、別の島に新しい処分場を建設中だ。
 リサイクル可能なカセットこんろ用のガス缶やプラスチックなどを分別し、リサイクルセンターに運び込めば、新処分場の使用期間をより長くすることができる。そこで、埋め立てごみを削減するため、分別に関する地元住民の意識改革に取り組んでいるのが、四日市市の公益財団法人「国際環境技術移転センター(ICETT)」だ。
 ICETTは一九九〇年、全世界規模で取り組む必要がある環境問題に対処するため、日本が持つノウハウを外国に移転することを目的に発足した。パラオでは二〇一八年八月から、JICAの事業としてガッパン州イボバン地区とアイメリーク州モンガミ地区で、住民にごみの分別を指導している。
 両地区は、合わせて五十世帯程度の小さな集落。当初は、若い世代を中心に協力的でない人も多かった、とプロジェクトマネジャーの喜瀬明子さん(61)らは振り返る。
 「やるからには全世帯に納得してもらわないと意味がない」。喜瀬さんらICETTの職員は、処分場の見学ツアーを開催。住民集会を開いて分別の必要性を説明し続けた。地道に説得したかいもあり、「リサイクルステーション」と呼ばれる分別したごみの収集所が八カ所、一月から順次、住民主導で稼働を始めた。
 イボバン地区に住むグロリア・クロダさん(55)は「分別はどうでもいいと思っていたし、最初はどうしたらいいか分からなかった。今は、いいことなので子どもたちにも分別の仕方を教えている」と笑顔で話す。
 パラオは観光業が主産業とあって、もともと街や公道にごみくずなどは落ちておらず、清潔で落ち着いたたたずまいを見せる。喜瀬さんは「パラオの人々は経験がないだけで、方法さえ分かったらきれいに分別できる」と、手応えに自信をのぞかせる。「二つの地区をモデルに、州内の他の地区や他の州にも広がってくれたら」と、期待をふくらませている。