◆住民ら「大変ありがたい」
 浜松市の遠州灘沿岸部でまもなく完成する防潮堤。大津波で甚大な被害が出た東日本大震災から九年。沿岸の住民は歓迎の声を上げる一方、避難訓練の重要性を口にした。
 一七・五キロの巨大防潮堤の西端は浜名湖の今切口。国道1号の浜名バイパスと並行して東へ延びる。防潮堤の最上部は遊歩道として整備され、歩行者や自転車が行き交う。
 「住んでいる舞阪町は、逃げ場となる高台が少ない。とてつもない減災効果で、大変ありがたい」。今切口近くに住む西区自治会連合会の鈴木孝一会長(68)は感謝しつつ、「迅速な避難行動を口酸っぱく呼び掛けていきたい」と話す。
 原資は地元創業の住宅メーカー「一条工務店」の三百億円。地元企業や市民の間で「一条に続け」と寄付が広がり、市の対策基金には約十三億円が集まった。
 西区の篠原地区自治会連合会も約五年前、二百十万円の善意を寄せた。太田一夫会長(73)は「地元の熱い思いの表れ。過信してはいけないが、完成でひとまず安心」と胸をなで下ろす。
 一方で新たな不安も。南区の遠州浜第二自主防災隊の伊藤克郎隊長(81)は「避難行動が鈍くならないか心配」と顔を曇らせる。地区住民の三割がブラジルや中国などの外国人。避難訓練に参加しやすいよう、非常食メニューの一部はブラジル料理に。夜間訓練にも積極的に取り組んできた。「防潮堤ができても、より早く、より高く避難することは変わらない。顔の見える関係づくりも大事」と気を引き締めた。
(角野峻也)