総曲輪 電車なら楽々
港町・岩瀬ににぎわい
利便性と課題 実感
 富山駅の南と北を走る路面電車が接続され、二十一日の始発から直通運転を始めた。次世代型路面電車(LRT)が市北部と中心市街地を結び、沿線住民の利便性向上や観光などの産業の活性化が期待される。初日の電車に乗り、市の南北を行き来してみた。(柘原由紀)
 午前十時すぎ、カメラを持った多くの鉄道ファンや市民でにぎわう富山駅の高架下停留場から、駅北の岩瀬浜行きに乗り込んだ。南北の直通運転は岩瀬浜から駅南の環状線、南富山駅前、富山大学前の三方面。車内は、新路線の車窓からの景色を楽しむ市民でいっぱいだった。
 終着点の岩瀬浜で降車した。港町の風情を残す観光地の岩瀬地区は、接続効果を見込んで飲食店などの開業が相次ぐ。昨年十一月に開店した「キッチン&カフェ ガレガレ」のオーナー網谷一吉さん(58)は「交通の便は圧倒的に良くなった。南から北へと人の流れが変わって店が忙しくなるといいね」と笑顔を見せた。
 電車に乗って同地区を訪れた和歌山県岩出市の主婦弓場佳世子さん(58)は「レトロな車両もあれば新型車もあるのが良い。たくさん乗って市内のいろんなところへ行きたい」と旅を楽しんでいた。
 岩瀬浜で折り返す。南へ向かう途中、市北部に住む家族連れがたくさん乗り込んでくる。富山駅の接続部分を抜けて、中心市街地の総曲輪にあるグランドプラザ前に到着。百貨店「大和」は目の前だ。車だと混雑した駐車場に入れる必要があるが、電車ならこんなに楽なのかと驚いた。
 岩瀬浜から九・七キロ、かかった時間は六十分だった。乗り換えの手間がなく、運賃はこれまで通り二百十円。通勤、通学客や観光客には大きな利点となりそうだ。
 ただ、不安な点も目についた。北側から乗った乗客は大半が富山駅で降りてしまい、総曲輪のにぎわいはいつもとあまり変わらないように見えた。
 富山市は南北接続を、公共交通を活用して中心市街地に人を集める「コンパクトシティー政策」の「集大成」と自負し、約四十億円の総事業費を投じた。しかし、開業を見ようと車で富山駅を訪れた市内の会社員宮本仁史さん(46)は、車から公共交通の利用に切り替える意識は「今はない」と明かした。
 富山地方鉄道は約一割の乗客増を見込んでいるが、市北部から「乗って行きたい」と思えるような中心市街地の魅力づくりには課題が残ったままだ。
重心北へ 南の魅力アップを
北陸経済研・藤沢部長
 北陸経済研究所・藤沢和弘調査研究部担当部長の話 接続で富山駅の北と南が近くなり、街の重心が従来の南から北へ移っていくことが予測される。それを受けてまちづくりの設計図も見直す必要がある。大手のスーパーなどには棚の端に訴求力の高い商品を置く戦略があるが、路面電車でも南北の両側に集客力のある観光スポットが必要だ。しかし、特に総曲輪周辺の南側中心市街地が観光客や市民にとって魅力あるものになっているのか疑問だ。南北接続開業は画期的だが、インフラだけが整った状態。それに見合ったコンテンツ(中身)を充実できるかが課題となる。