あの日の記憶を風化させない−。新型コロナウイルスの影響により、県内外で東日本大震災の犠牲者追悼行事が中止・縮小された。そんな中、被災地支援に関わってきた浜松市中区中央の市民協働センターは、“小さな写真展”の会期を延長し、震災の悲惨さと防災の大切さを訴えている。午前九時〜午後九時半、三月末まで。閲覧自由。
 宮城県石巻市の青空や、咲き誇るフランスギク、そして、焼け焦げた上靴。写真は全部で十六枚。石巻市で通う幼稚園のバス移動中に津波に遭い、その後の火災で亡くなった佐藤愛梨ちゃん=富士市生まれ、当時(6つ)=が、今年迎える年の数と同じ枚数だ。
 撮影したのは妹の珠莉(じゅり)さん(12)=石巻市、小六。小学三年の頃にカメラを手にし、姉の遺品を記録したほか「お姉ちゃんと一緒に見たかった景色」に出会うとシャッターを切る。千枚近く撮りためた写真の一部が巡回展として全国で飾られている。
 母の美香さん(45)は、愛梨ちゃんの亡くなった場所に咲いたキクの苗を全国に広める「アイリンブループロジェクト」に取り組み、語り部として活動している。写真展の開催をきっかけに、一月には浜松市であったセンター主催の防災シンポジウムで講演をした。美香さんは「一番の防災は自分の命を守ろうとする『心の備え』を持つこと。写真と私たち家族の経験から、その大切さが伝われば」と思いを寄せる。
 展示は一月中旬から三月十一日までだったが、新型コロナウイルスで予定していた次の展示が延期になった。事情を知った副センター長の鈴木恵子さん(61)の厚意で、浜松での展示期間が延長された。
 鈴木さんは「センターの近くで毎年あるキャンドルイベントが今年は中止に。他の追悼行事も縮小。そんな今だからこそ、続けようと決めた」と話す。作品は二階の広い空間の片隅で、空気の入れ替えがしやすい場所にある。施設入り口には消毒液を置くなどの配慮もした。
 ボランティア活動の支援をする同施設は、開館の翌年に東日本大震災が起きた。その後、震災ボランティアを希望する市内の中高生の声を基に、多くの被災地支援の窓口となってきた。
 鈴木さんは「あの日から一日一日遠くなる。特に珠莉さんや愛梨さんと同世代の人に、震災を記憶し考えるきっかけにしてもらいたい」と願いを込める。
(大城愛)