昨年一年間に県警が扱った遺体は前年比三十八体減の千二百九十三体で、うち事件性を判断するため検視官が現場に出向いて遺体を調べた「臨場率」は1・2ポイント増の96・5%と過去三番目の高さだった。全国でも臨場率は上昇し、1・3ポイント増の81・3%と過去最高を更新。犯罪死の見逃しを防ぐ姿勢を強めている。
 検視は、死亡した人の死因が分からなかったり遺体に不審な点があったりした場合、検視官が現場に駆けつけ、遺体や現場の状況を確認。事件性の有無を見極め、司法解剖の必要性を判断する。
 近年は高齢者の孤独死などで警察が取り扱う遺体数は増加傾向にあり、県内の死亡届け出数全体の一割程度に上る。年齢別では七十歳以上が65%、死因別では病死が69%だった。事件性の有無を明らかにするため、裁判所の令状に基づき司法解剖を行ったのは百二十一件で、前年から七件増えた。
 県警は検視の精度を高めるため、コンピューター断層撮影(CT)での画像診断も県内医療機関の協力を得て積極的に実施。昨年は前年比四十四件増の五百六十七件で過去最多だった。
犯罪死 見逃さない
2人1組を3班体制で
1日に10体、700キロ移動も
 法医学の専門知識を基に遺体の観察、現場捜査などによって犯罪による遺体かどうかを突き止めるのが県警の「検視官」だ。年間千件超の変死体を取り扱い、現場から現場へと駆け回る。重い責任と大きな負担を背負いながら、犯罪死の見逃しを防ぐ最後のとりでとして奮闘する。

 県警捜査一課の検視官室に配備された携帯電話が鳴る。変死事案発生による署からの臨場要請。遺体の年齢や性別、発見時の状況などをまず聞き取り、現場到着までに関係者の確保や聴取、遺体の写真撮影といった捜査指示を、先着した署員に伝える。

 「例えば遺体が女性、さらに若い場合であれば犯罪の可能性が高いとみる。自殺、病死いずれも予断は持たない」。総括検視官を務める竹内敬久(たかひさ)警部(50)が語る。県警の検視官は二人一組の三班体制で日勤、当直と二十四時間体制の勤務をこなす。「一日に扱うご遺体は多いときで十体。移動距離は珠洲から大聖寺まで七百キロになることもある」

 当日の検視班が出払っていれば竹内警部自ら現場に向かい、司法解剖に立ち会うこともある。先日は金沢市内の高齢者宅へ。高齢男性が布団に覆いかぶさるような姿勢で息を引き取っていた。男性が慢性心不全などを抱え、数日前から体調不良だったことなどを家族から聞き取る。遺体を注意深く観察し、犯罪の可能性がないと確認した。

 近年は高齢者が外出中に屋外で急死する事例も増えているという。目撃者がいない場合もあり、検視で少しでも事件性が疑われれば司法解剖を実施する。

 検視業務はこれまでの捜査現場での経験が生きる。検視は「遺体三割、環境捜査が七割」と伝えられてきた。目の前の遺体だけでなく、背景に何があるかを幅広い視野で捜査し、判断することが求められる。扱う遺体は腐敗が進んでいる場合や、電車にひかれ損傷が激しいケースもある。

 竹内警部は「どんなご遺体も丁重に扱い、ご遺族への礼も失しないことが検視の基本。決して華々しい仕事ではないが、犯罪死を見逃さない最後のとりでとして力を尽くしたい」と力を込めた。 (本安幸則)