県こころの健康センター 角田所長に聞く
 毎年三月は全国的に自殺する人が増える傾向があるため、厚生労働省は自殺対策強化月間とし、相談態勢を強化している。警察庁によると県内の自殺率は全国でも低く、昨年は四十七都道府県で四十一番目だったが、前年より十人も増えた。県こころの健康センター所長を七年間務めている精神科医の角田(つのだ)雅彦さんは訴える。身近に思い悩んでいる人がいたら、気持ちを受け止めて聞き役に回ってほしい、と。(高橋雪花)
 −県内の自殺で特徴的な傾向は。
 「能登北部は自殺率が高い。高齢化率が高いことや、常勤の精神科医が少ないことが理由に挙げられる。健康問題のほか、疎外感や自分を『お荷物』だと感じてしまうことから高齢者の自殺が特に多い。一方、金沢市では働き盛りの層による自殺が多い」
 −自殺者が多い時期は。
 「二〜三月だが、特に三月が目立つ。大学生の場合、留年が決まったり就職活動に失敗したりしたことを苦にした自殺が多い。社会人の場合、決算期で借金の取り立てが厳しくなったりする事情がある。経済状況は自殺に関連する。新型コロナウイルスの影響で会社の倒産が増えた場合に、自殺も増えるのではと危惧している」
 −自殺しやすいタイプの性格とかはあるのか。
 「自殺者は7対3で男性が多い。我慢するのが美徳と思われ、ストレスがあっても相談しないからだろう。性格はきちょうめんで生真面目、完璧主義だったり、悩みをため込んだりすると、うつ病になり自殺につながりやすい。ほかに飲酒量などが関連すると言われている」
 −周囲はどのようなサインに気を付ければいいか。
 「憂うつそうな表情、興味や関心の低下、意欲低下などのうつ病の症状が出ていると思ったら注意してほしい。大きな失敗をしたり、自殺を口にしたりしている時は危険だ」
 −そのときの対応は。
 「自殺の心配がある人への対応のいろはを『TALK(トーク)の原則』という。Tell(『心配だ』と伝える)、Ask(尋ねる)、Listen(聞く)、Keep safe(安全を守る)の頭文字をとったもの。相手の気持ちを受けて止めて、聞き役に回ってほしい」
 −今、心に苦しみを抱えている人に対して。
 「悩みを抱え込まずに、ぜひ少し勇気を出して信頼できる人に相談をしてみてください。解決策を見いだせるかもしれないし、話すだけで気持ちが少し楽になります。愚痴もOKです」
 自殺対策強化月間 自殺は毎年3月に増加する傾向があるため、厚生労働省が「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現に向け、啓発活動をしている。2016年4月に改正された自殺対策基本法にも3月を強化月間にすると明記された。警察庁によると、昨年の県内の自殺者は172人で、3月は17人だった。