地元出身の歯科医師として一九九七(平成九)年に七尾市中島町浜田で歯科口腔(こうくう)外科医院を開業した室木俊美さん(63)は二十三年間、地域に根差し住民らの歯と口の健康を守り続ける。金沢大医薬保健研究域医学系協力研究員、金沢医科大非常勤講師のほか石川臨床インプラント学術研究会(ICI)会長も務め、チタン製の人工歯根に人工の歯を付ける「歯科インプラント」の技術向上や治療法普及に懸命だ。県内で限られるインプラント研修拠点も担い、後進育成にも使命感を燃やす。(室木泰彦)
 ■地元病院初の手術
 父親が開業歯科医師だったこともあり、金沢大医学部の大学院であごや口腔内、顔面の再生治療学を研究。同大の山本悦秀名誉教授、学長も務めた中村信一名誉教授に口腔内の感染症の基礎的な指導を受けた。
 金沢大病院時代、山本名誉教授と舌がん患者に同病院初のインプラント手術を執刀医として行った。ところが、その後は顔面骨折や口腔がんなどの患者の治療に追われ、インプラントと無縁の日々が続く。九二年、地元七尾市の公立能登総合病院口腔外科医長に就いた。交通事故で上あごを失った患者に骨移植を行い、同病院初のインプラント手術。これが技術を究めていく契機になった。
 ■故郷で開業
 同病院で五年目、そろそろ金沢大病院へ戻ろうと考えていた時、父親が死去した。元々四十歳ぐらいで開業をと思っていたが、はからずも父の医院を受け継ぎ四十歳で口腔外科医院を開業。室木口腔インプラントセンターも開設した。当時県内で最初の口腔外科専門医だったという。
 かねがね故郷の知人らに「早く帰って来んかいね」と言われていたこともあり、「お帰り」と歓迎された。開業初年、入れ歯が合わない六十代男性にインプラント治療を実施。その後もインプラントの治療実績を積み、古い治療法を改善した研究論文も発表し続けた。インプラントで北陸第一人者とも言われる存在に成長した。
 ■研修で後進育成
 二〇一一年一月、日本口腔診断学会が研修施設として認定。日本口腔インプラント学会の専門医施設にもなり、各医院から集まる歯科医師の指導にもあたる。「口腔外科治療が複雑化してきた今も能登では他に研修拠点がない」と室木さん。そのため「口腔外科の治療範囲が昔より格段に広がり、歯科大学などを出てすぐ最前線治療というわけにいかない。若手が都市部の研修で吸収した知識や技術を、当院の研修で勉強してもらう。これが若手にとって大事な経験」と話す。
 患者の負担が少ない治療がモットー。インプラントで最も難しいという上あごの臼歯部の治療では、内視鏡を使うなど安全で患者の負担が少ない治療技術を研究し手術時間を短縮した成果の論文も毎年発表。特に患者からの血液を利用し、インプラントを入れるだけの骨が不足する場合、血液に含まれる血小板を用いて骨を再生させる技術は国内トップランナーで「室木方式」とも言われる。この技術をつまびらかに伝える著書も発行。今秋予定の日本口腔インプラント学会総会で最新成果を発表する。
 「担当医の技術によって治療結果に差が出てはいけない。誰がやっても同じ成果が出る治療法を確立し全国的に普及させたい」。これまでのインプラント本数は三千本を超え患者二千人に提供した。世界の先端治療に目を配り、能登の地で歯と口腔の健康維持に努める姿勢は変わらない。
=室木さんが歯と口の健康について分かりやすく紹介する企画「噛(か)む Come(カム) ハッピーライフ」を今後、随時掲載します