◇記者コラム

 「Zoom女優」なんて言葉を書く日が来るとは夢にも思わなかった。新型コロナウイルスによる打撃を受けた演劇界。ビデオ会議システム「Zoom」を利用した演劇「オンラインノミ」が4月26日に誕生、5月に取材し、紙面化した。

 自粛期間中、毎日が真剣勝負の生配信が話題となり、好評に。「2」までシリーズ化され、5月31日までのロングランとなった。全公演終了後、女優・中冨杏子(26)を直接取材する機会があり、「Zoom女優って言われるのはどうでしたか? 正直、嫌でしたか?」と聞いた。すると、弾んだ声が返ってきた。

 「全然、嫌じゃなかったですよ。私もZoom女優って呼ばれる日が来るとは思わなかったですけど…これからも続けていきたいですね」

 貴重な体験の連続だった。初日公演終了時、演技中は見えなかった観客から「面白かった」、「ありがとう」という声を聞き、自然と涙がこぼれた。稽古もオンライン。共演者と直接、会ったことはなかった。「画面を録画して、確認して、演技を修正した」という。機械音痴だったが、Zoomの機能をフル活用できるようにもなった。

 新しい挑戦の連続は、18歳で離れた故郷・福岡まで届いた。オンラインは物理的な距離を縮めてくれる。「本当にすごいですね。小学校の時の先生から連絡が来ました。びっくりしましたよ」。思わぬ副産物も生み出した。

 未開の地を開拓した約1カ月を終えた。通常の演劇再開に向けたオファーもあるという。観客の顔、反応を見ながらの演劇に「早くやりたい気持ち」。コロナ禍でも変化、環境に適応したZoom女優。通常の劇場での演技にどのような相乗効果を生み出すのか。また、未知で言葉が生まれるのか。コロナ後の新しい文化、表現を楽しみに待ちたいと思う。(占部哲也)