プロ野球が開幕し、サッカーも27日からJ2が再開、J3が開幕する。そして7月4日にはJ1が再開。7月10日からはプロ野球もJリーグも人数限定で観客を入れての開催となる。この日を待ちわびていた「月刊ラモス」のラモス瑠偉編集長は「感無量です。たくさんのいいプレーで、日本中を明るくしていきたい」と胸の高まりを抑えきれない。まだ新型コロナウイルス禍は終息したわけではないが、新たな日常に向けてプロスポーツが復活の日を迎えた。

 選手も、サポーターのみなさんも、そして私も、どんなにこの日を待ちわびたことか。私も東京ヴェルディのチームダイレクターという立場でJリーグにかかわっているだけに、選手たちのたくさんのいいプレーが、日本を明るくしてくれることを願っている。彼らのプレーが、日本中のサポーターのみなさんに夢と希望を与えることができるなら、これ以上うれしいことはない。

 一足先にプロ野球が開幕した。お客さんが入っていないならいないで、いろいろな楽しみ方があることがわかった。鋭い打球音はものすごく迫力があるし、ベンチの声が聞こえてきて、それもなかなかおもしろい。スタンドにファンの姿を写したパネルやメッセージパネルを置いたり、メッセージ入りのユニホームを並べたり、大型ビジョンに応援するファンの映像を流したり…。それぞれの球団が知恵を絞って盛り上げている。

 ただ、どうしても違和感を感じてしまうのが、エアのハイタッチやグータッチだ。医学的な知識に乏しいから、軽率なことは言えないが、もう解禁してもいいのではないか。7月10日にはお客さんもスタンドに帰ってくる。ホームランを打ったら、ゴールが決まったら、そして勝利を手にしたら、サポーターも選手も、心の底から喜んでほしい。

 27日、ヴェルディは味の素スタジアムで町田と対戦する。もちろん優勝したいし、狙っていくが、けが人が多く、再開直後は難しい戦いになるかもしれない。

 J1もJ2も、一度は仕上がったチームが練習自粛となり、短時間で再びチームを作り直してきている。難しいのはどのチームも同じだ。先行きが不透明な中、いかに強い気持ちで準備を進めてきたか。緊張感のある練習を続けてきたチームが勝つだろう。

 この3カ月で、これまで当たり前だったことが当たり前ではなくなった。まずは再開を喜ぶべきだが、懸念材料のひとつに、昇格はあっても、降格がなくなったことが挙げられる。優勝争いは間違いなく盛り上がる。上位のクラブは最後までリーグを盛り上げてくれるだろう。問題は下位チームだ。残留争いはリーグ戦の大きな見どころだ。降格があるからこそ、多くのドラマが生まれる。降格がないとなれば、どこまでモチベーションを維持できるのか。「それでも必死に戦うのがプロだ」と言われればそうなのだが、プロだって人の子である。

 コロナの影響でリーグの期間が大幅に短縮され、日程も過密になっている。選手がコロナに罹患(りかん)したり、濃厚接触したら、チーム活動に支障が出る。最悪の場合、クラブによって消化する試合数が違ってくる可能性もある。そうした不公平な状況が発生することを想定し、降格をなくしたのだが、そうなると、何のために戦うのか、目標設定が難しい。

 最後の最後までサポーターの心を震わせる戦いを続ける。そのためにリーグ、クラブが選手にどう働きかけるのか。大きな課題である。

 ところで、6月28日の午後3時半から、NHK総合で1993年5月15日に行われた記念すべきJリーグ“誕生戦”、ヴェルディ川崎VS横浜マリノスの一戦がオンエアされる。副音声で私と和司(横浜マリノスOBの木村和司さん)もリモート出演するので、ぜひ見てください。

 Jリーグが誕生したこの年、第2ステージが中断され、その間に94年W杯アジア最終予選が行われた。ここでこけたら日本サッカー界の未来はない。ものすごいプレッシャーを感じながら戦い、出場権をかけた10月28日イラク戦のロスタイム、同点ゴールを喫して夢破れた。

 のちにドーハの悲劇と呼ばれるようになったが、私はそのドーハで完全に燃え尽き、真っ白な灰になっていた。帰国後もしばらく家から出ることができずにいたが、仲間たちに励まされ、ぎりぎりのタイミングでピッチに戻った。11月6日、神戸ユニバーで行われたガンバ大阪戦、ヴェルディは4―0で完勝した。

 絶対に優勝してやる。その一心で戦い、第2ステージを制し、さらにチャンピオンシップで鹿島アントラーズを下して初代王者に輝いた。W杯切符は逃した。しかし、日本中を巻き込んだ熱狂が衰えることはなかった。

 80年代、まだバブル前の時代、国立競技場にお客さんを呼ぶために読売クラブのチームメート、都並や藤川、武田、トレドらと一緒に六本木の交差点で試合のチケットを配っていたことを思い出す。試合当日、スタンドの一角に派手なオネーさんたちが陣取って、キャーキャー言っていた。とにかく必死だった。

 今の選手にその時代を理解しろと言っても無理だろう。コロナのせいで日本サッカーが後退するようなことは絶対にあってはならない。まさにリスタート。新しい時代は、選手たちの情熱によって切り開かれる。(元日本代表)